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なぜ国産バターは高いのか ── 生乳の値段の決まり方

  • 8月17日
  • 読了時間: 6分

更新日:8月20日

国産バターの値段が高い理由は、単に品質が良いからではありません。原料となる生乳の値段が、牛乳用かバター用かという用途によって階層化されているからです。日本において高く売れるのは飲むための牛乳であり、バターなどの加工用はその余りを受け止める構造になっています。この仕組みそのものが、スーパーに並ぶバターの価格を決めています。



生乳はまず高く売れる牛乳用として出荷される


日本では、牧場で搾られた生乳の行き先によって取引される値段が変わります。最も高く買い取られるのは、そのまま飲むための牛乳用です。酪農家にとって、手塩にかけて搾った生乳はできるだけ高く売れる牛乳用として出荷したい産物と言えます。しかし、牛乳の消費量は季節や学校給食の有無によって大きく変動します。一方で、牛は毎日同じように乳を出すため、消費の波と生産の波が合わず、どうしても生乳が余る時期が出てきます。

この余った生乳が行き場を失わないよう、バターやチーズといった加工用として安く買い取られます。飲用が高く、加工用が安いという階層化された仕組みが、日本の生乳流通の土台です。牛乳の需要を満たした後の余剰分で作られるため、国産バターの生産量は牛乳の消費動向に大きく左右されます。牛乳が売れ残ればバターの生産が増え、牛乳が不足すればバターの生産は減ります。加工用の生乳は安く設定されているものの、バターの供給そのものが余剰乳の量に依存しているため、価格を安定させて安く大量に提供することが難しい構造にあります。



ひと箱のバターには4リットルの生乳が詰まっている


加工用の生乳が安く買い取られるなら、バターも安くなるはずだと考えるかもしれません。しかし、バターを作るには膨大な量の生乳が必要です。バター1キログラムを作るには生乳が約20から23キログラム必要とされます。スーパーの冷蔵コーナーでよく見る200グラムの箱入りバターを作るために、約4リットルもの生乳が使われています。4リットルといえば、1リットルの牛乳パック4本分です。それだけの量の水分を抜き、わずかな乳脂肪だけを抽出して固めたものがバターになります。

いくら加工用の生乳価格が飲用より低く設定されていても、これだけの量を使えば原料費は大きく膨らみます。さらに、バターの製造工程は非常に手間がかかる作業です。生乳から生クリームを分離し、それを激しく攪拌して脂肪の粒を集め、水分を練り出してようやくバターの形になります。この一連の工程にかかる時間や設備、エネルギーの費用が、原料費の上に積み重なります。生乳の値段の仕組みと、バターという食べ物の本質的な濃縮度が掛け合わさることで、今の価格が形成されています。



飼料の輸入依存が日本の生乳生産コストを押し上げている


バターの原料費がかさむ根本的な背景には、日本の酪農が抱える構造的なコストの高さがあります。日本の飼料自給率は26パーセントで、栄養価の高い濃厚飼料の約87パーセントは輸入に頼っています。牛が食べるエサの大半を海外から船で運んできている状態です。コンテナ船で運ばれる飼料の価格は、為替の変動や輸送費の高騰の影響を直接受けます。

また、日本の酪農は牛舎で飼う「舎飼い」が約9割を占めるとされます。牛舎の維持や糞尿の処理、輸入飼料の購入費用がそのまま生乳の生産コストに跳ね返ります。全国の生乳のおよそ半分は北海道で生産されていますが、広大な土地を持つ北海道であっても、輸入飼料に頼る構造は大きく変わりません。海外の安価な放牧酪農と比べると、生乳を1リットル搾るための原価そのものが高い状態にあります。この高い原価で作られた生乳を大量に使ってバターを作るため、どうしても海外産のバターと比べて価格が高くなります。



作り手が小ロットで直接バターを届けるという選択肢


日本の国産バターの多くは、余った生乳を一手に集めて大規模な工場で作られます。一方で、私たちのような小さな乳製品メーカーは、異なるアプローチをとっています。用途別の価格差や余剰乳の調整に縛られず、自分たちの牧場で搾った生乳を直接バターに加工しています。私たちは北海道西興部村で、牛を牛舎に縛り付けず草を食べて育てるグラスフェッド酪農を行っています。

グラスフェッドミルクはすっきりとして後味が軽く、ミルクの甘みが残ります。お客様からは「軽さに驚く」「あっさりしている」という声をいただきます。小さな工房でバターを作る場合、大規模工場のような効率は追求できません。しかし、生乳の鮮度を保ったまま、牛が食べた草の風味をダイレクトにバターに閉じ込めることができます。輸入飼料に頼らず、足元の草を食べて育った牛の生乳から作るバターは、日本の酪農のもうひとつの形です。



季節の移ろいをそのままバターの味として受け入れる


大規模な工場で作られるバターは、複数の牧場の生乳を混ぜ合わせるため、一年中同じ味と色を保ちやすくなります。しかし、牛が食べる草が変われば、生乳の味も変わるのが自然な姿です。夏は青草の香りが立ち、すっきり軽やかな風味に仕上がります。色は黄色みを帯びます。冬は貯蔵草を食べるため、乳脂肪が乗ってコクが増し、濃厚になります。色は白に近づき、草の香りは穏やかになります。色・草の香り・コクはそれぞれ独立して変化します。

現在、日本にはグラスフェッド表示を定めた公的基準がありません。だからこそ、作り手自身がどのような環境で牛を育て、どのようにバターを作っているかを透明にすることが求められます。朝のトーストにバターを塗るとき、その背景にある生乳の値段の決まり方や、牛が何を食べて育ったのかを想像してみてください。冷蔵庫にあるそのひと箱が、どのような経路をたどって手元に届いたのかを知ることで、バターの味わい方も少し変わるはずです。



よくある質問


Q. バターの色が黄色いのは着色しているからですか。

牛が食べた草に含まれる成分が乳脂肪に移った自然の色です。夏の青草を食べた牛の生乳から作るバターは黄色みを帯びます。冬に貯蔵草を食べた牛の生乳から作るバターは白に近づきます。


Q. グラスフェッドバターは普通のバターと味が違いますか。

グラスフェッドミルクから作ったバターは、すっきりとして後味が軽い仕上がりになります。ミルクの甘みが残り、あっさりしているのが特徴です。冬場は乳脂肪が乗ってコクが増します。


Q. 国産のグラスフェッドバターはどこで買えますか。

生産量が限られているため、一般的なスーパーに並ぶことは多くありません。作り手の直営オンラインショップや、一部の自然食品店などで取り扱われています。



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この記事はミルクデザイン株式会社が作成しています。北海道紋別郡西興部村で、萩原牧場のグラスフェッド生乳から牛乳・ヨーグルト・バター・チーズ・アイスクリーム・ソフトクリームを製造しています。

 
 
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