日本にグラスフェッドバターがほとんど無い理由
- 8月17日
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更新日:8月20日
スーパーのバター売り場を探しても、牧草飼育の国産バターはまず見つかりません。無いのは需要が無いからではなく、越冬と加工という二つの関門を同時に越えられる牧場と工場の組み合わせがほとんど存在しないからです。なぜ日本の風土で牧草飼育のバターを作ることが難しいのか、その背景にある仕組みを説明します。
日本の気候が一年を通じた牧草飼育を阻む
牧草飼育のバターを作るには、まず原料となる生乳を牧草だけで育った牛から搾る必要があります。日本の酪農は牛舎で飼う「舎飼い」が約9割を占めるとされています。また、日本の飼料自給率は26パーセントで、濃厚飼料の約87パーセントは輸入に頼っています。牧草飼育のバターを作るには、この輸入飼料に頼る仕組みから離れて、牧草だけで牛を育てる必要があります。
しかし、全国の生乳のおよそ半分は北海道で生産されています。北海道の冬は雪に覆われ、牛が外で青草を食べることはできません。夏に刈り取って発酵させたサイレージや、乾燥させた乾草を冬の間に与えることで、牧草飼育を維持します。牛一頭がひと冬を越すために必要な牧草の量は膨大です。春から秋にかけて、広大な牧草地を管理し、適切なタイミングで刈り取り、発酵や乾燥の処理を施して保管場所を確保する。この冬場の牧草を自前で十分に確保できる広大な土地と設備を持つ牧場は、ごくわずかしかありません。
原料となる生乳を一年中確保する段階で、すでに高いハードルが存在します。では、生乳を搾ることさえできれば、すぐにバターになるのでしょうか。
バター加工には専用の設備と大量の生乳が要る
牧場が牧草飼育の生乳を搾っても、そのままではバターになりません。バターを作るには、生乳からクリームを分離し、激しく攪拌して脂肪分をまとめる工程が必要です。
日本の乳製品工場は、大量の生乳を集めて効率よく作るように設計されています。牧草飼育の生乳は全体から見ればごく少量です。これを大規模な工場のラインに乗せることはできません。他の生乳と混ざってしまえば、牧草飼育のバターとして販売できなくなります。
そのため、少量の生乳だけでバターを作るには、専用の小型設備を持つ工場が必要です。しかし、牧場が自分でバター工場を建てるには、多額の資金と衛生管理のノウハウが要ります。牧草飼育の生乳を搾る牧場と、小ロットでバターを作れる工場。この二つが近くに存在し、なおかつ連携できる環境がないと、国産のグラスフェッドバターは生まれません。生乳を運ぶ距離が長くなれば、移動の間に鮮度が落ちてしまうからです。
原料の確保と加工設備の確保。この二つの条件が揃う場所が日本にはほとんどないため、作り手は限られます。
季節で変わる生乳の性質が作り手を悩ませる
さらに、牧草飼育の生乳は季節によって成分と味が大きく変わります。当社で製造しているグラスフェッドミルクは、すっきりとして後味が軽く、ミルクの甘みが残るのが基調です。
牛が食べる草が変わると、生乳の性質も変化します。夏は青草の香りが立ち、すっきり軽やかになります。青草に含まれる色素の影響で、バターの色は鮮やかな黄色みを帯びます。一方、冬は貯蔵草の時期です。乳脂肪が乗ってコクが増し、濃厚になります。色は白に近づき、草の香りは穏やかになります。
作り手にとって、この季節変動は大きな課題です。季節ごとに乳脂肪分が変わるため、バターの水分量や硬さを一定に保つには、その日の生乳の状態に合わせて加工の微調整が必要です。毎日同じ味と色を大量に作る工業製品の枠には収まりません。
味や色が均一でないことを、品質のブレではなく自然の変化として受け入れてもらう必要があります。
公的基準がない中で品質を証明する難しさ
最後に、牧草飼育の価値を証明する難しさがあります。日本にはグラスフェッド表示を定めた公的基準がありません。米国農務省が2007年に定めたグラスフェッド表示の任意基準も、2016年には撤回され、民間に委ねられました。
基準がないため、何をもって牧草飼育とするかは作り手自身が説明する必要があります。牛がどんな草を食べているか、冬の間はどう過ごしているか、工場でどう加工しているか。一つひとつの工程を透明にし、消費者へ伝える手間がかかります。
牧草の確保から加工、そして販売まで。すべての関門を越えたバターだけが、売り場に並びます。もしスーパーで牧草飼育の文字を見かけたら、裏のラベルの製造地を確認してみてください。
よくある質問
Q. グラスフェッドバターは普通のバターと味が違いますか
すっきりとして後味が軽く、ミルクの甘みが残るのが特徴です。「あっさりしている」「軽さに驚く」という声もよくいただきます。夏は青草の香りが立ち、冬は乳脂肪が乗ってコクが増します。
Q. なぜ夏と冬でバターの色が違うのですか
牛が食べる草の状態が変わるためです。夏は青草に含まれる色素の影響で黄色みを帯び、冬は貯蔵草を食べるため白に近づきます。
Q. 国産のグラスフェッドバターはどこで買えますか
一般的なスーパーにはほとんど並びません。製造者のオンラインショップや、一部の高質スーパー、産地直送の売り場を探すのが確実です。
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この記事はミルクデザイン株式会社が作成しています。北海道紋別郡西興部村で、萩原牧場のグラスフェッド生乳から牛乳・ヨーグルト・バター・チーズ・アイスクリーム・ソフトクリームを製造しています。


