発酵バターとは(非発酵バターとの違い)
- 8月8日
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更新日:8月22日
発酵バターとは、原料のクリームを乳酸菌で発酵させてから作るバターのことです。発酵による香りの複雑さとコクが特徴で、ヨーロッパでは伝統的にこちらが主流。一方、日本で広く売られているのは発酵させない非発酵バターです。この記事では、2つの違い、発酵が主流になった歴史、風味の楽しみ方、有塩・無塩との関係、保存方法までを順に整理します。
クリームを発酵させてから作るため、香りとコクが豊かです
クリームを乳酸発酵させてから作るのが発酵バターです。
ヨーロッパでは発酵が伝統的な主流、日本は非発酵が主流です。
香りとコクの豊かさが持ち味で、お菓子作りにも好まれます。

発酵と非発酵の違い
発酵バター | 非発酵バター | |
作り方 | クリームを乳酸発酵させて撹拌 | クリームをそのまま撹拌 |
風味 | 発酵由来の香りとコク | ミルクの素直な風味 |
主流の地域 | ヨーロッパ | 日本 |
工程の違いはひとつだけです。クリームを撹拌(チャーニング)する前に、乳酸菌を加えて発酵の時間を置くかどうか。
その一手間で、ヨーグルトにも通じるかすかな酸味と、香りの奥行きが生まれます。規格の上では、どちらも同じ「バター」です。乳等省令の定めるバターの成分規格(乳脂肪分80.0パーセント以上・水分17.0パーセント以下)に、発酵の有無による区別はありません。
なぜヨーロッパでは発酵が主流なのか
答えは、冷蔵庫のなかった時代にあります。
バター作りには、まず生乳からクリームを集める工程が要ります。かつてのヨーロッパの農家では、数日かけてクリームを集めるうちに、空気中や乳に由来する乳酸菌が働いて、自然に発酵が進みました。
つまり発酵バターは、「作ろうとして作った」のではなく、「そうならざるを得なかった」バターです。その風味が土地の食文化に根づき、冷蔵技術が普及した後も、あえて乳酸菌を加えて発酵させる製法として受け継がれました。
ヨーロッパでは今も、発酵バターは日常の食材であると同時に、土地の誇りでもあります。フランスには産地の名を冠したバターを伝統食材として保護する仕組みがあり、パンとバターだけで一皿が成立する食文化が根づいています。
一方、日本でバター製造が本格化したのは近代以降です。すでに冷蔵技術があり、発酵を経ない作り方が標準になりました。日本のバターの多くが非発酵なのは、この歴史の違いによります。
どちらが優れているという話ではありません。ミルクの素直な風味を活かす非発酵と、発酵の香りを重ねる発酵。生まれた背景が違う、2つの完成形です。
風味の特徴 ── 「酸っぱい」ではなく「深い」
発酵バターと聞くと強い酸味を想像するかもしれませんが、実際に感じるのは酸味そのものではなく、香りの奥行きです。
乳酸発酵によって生まれる香気成分が、ミルクの風味に重なります。ヨーグルトの香りをうんと穏やかにしたような、かすかな酸の気配とコク。トーストに塗って熱が加わると、香りの立ち方の違いがはっきり分かります。
お菓子作りの世界で発酵バターが好まれるのも、この香りのためです。クロワッサンやフィナンシェなど、バターの香りが主役になる焼き菓子では、焼成の熱で発酵の香りが立ち、風味の層が一段深くなります。
そのまま味わうときは、冷蔵庫から出してすぐより、少しだけ室温に置いてから。バターがわずかにやわらぐと香りが開き、発酵由来の奥行きが感じやすくなります。
作り方の工程
発酵バターづくりは、次の順で進みます。
まず、生乳からクリームを分離します。バターのもとになる、脂肪の多い部分です。
次に、クリームに乳酸菌(スターター)を加え、温度を管理しながら発酵させます。数時間から一晩かけて、乳酸菌が乳糖を分解し、香気成分とかすかな酸味が育ちます。ヨーグルトづくりと同じ原理を、クリームに応用した工程です。
発酵が進んだクリームを、今度は激しく撹拌します。チャーニングと呼ばれる工程で、脂肪の粒どうしがぶつかってくっつき、「バター粒」と「バターミルク」に分かれます。
最後にバター粒を練り上げ、水分を調整すれば完成です。
工程の数はひとつ増えるだけですが、発酵には時間と温度管理の手間がかかります。発酵バターが非発酵よりやや高価なのは、この時間のコストです。
日本でも広がる発酵バター
日本のバターの主流は今も非発酵ですが、発酵バターの人気は年々高まっています。
きっかけのひとつは、フランス産をはじめとする輸入発酵バターが菓子職人やパン職人に愛用され、その香りが知られるようになったことです。国内の乳業メーカーや小さな工房からも発酵バターが登場し、店頭で選べる機会が増えました。
見分け方は簡単です。商品名に「発酵バター」と書かれています。迷ったら、まずトーストで食べ比べてみてください。香りの立ち方の違いが、いちばん分かりやすい入り口です。
同じパン、同じ厚さで、非発酵と発酵を並べて塗る。たったこれだけで、言葉で説明するより早く違いが分かります。休日の朝の小さな実験としておすすめです。
有塩・無塩との関係
発酵かどうかと、塩が入っているかどうかは、別の軸です。組み合わせは4通りあります。
有塩 | 無塩(食塩不使用) | |
非発酵 | 日本の店頭で最も一般的 | お菓子作りの定番 |
発酵 | トーストなどそのまま味わう用途に | 製菓用として人気 |
パンに塗るなら有塩の発酵バター、焼き菓子には食塩不使用の発酵バター、と使い分けるのが定石です。レシピの「バター」がどちらを指すかは塩分に直結するため、置き換えるときは塩の量の調整が必要です。
なお「無塩バター」という通称は正確には「食塩不使用バター」を指します。乳にはもともと微量のナトリウムが含まれるため、完全な無塩ではないという理由で、表示上はこの名前が使われています。
香りの科学 ── バターらしさの正体
「バターらしい香り」と聞いて思い浮かべる、あの甘くコクのある匂い。その主役として知られるのが、ジアセチルという香気成分です。
ジアセチルは、乳酸菌が発酵の過程で作り出します。つまり発酵バターは、バターらしい香りの成分を、乳酸菌の力で上乗せしたバターだと言えます。焼き菓子やトーストで発酵バターの香りが際立つのは、熱でこの香気成分が立ち上がるためです。
発酵の設計──どの乳酸菌を使うか、どの温度で、どれだけの時間発酵させるか──によって香りの表情は変わります。同じ「発酵バター」でも作り手ごとに個性が違うのは、このためです。食べ比べる楽しみのあるバターです。
選び方
店頭で発酵バターを選ぶときの目安は3つです。
用途で選ぶ。トーストなどそのまま味わうなら有塩、お菓子作りなら食塩不使用が定石です。
産地で選ぶ。フランス産をはじめとする輸入品は伝統の香り、国産は鮮度と入手のしやすさが持ち味です。
原料で選ぶ。牧草で育った牛のミルクから作る発酵バターなら、草の風味と発酵の香りの両方を楽しめます。
グラスフェッドの発酵バター
発酵バターの「発酵」は作り方の話、グラスフェッドは「牛の飼い方」の話。この2つは両立します。
牧草で育った牛のミルクから作る発酵バターは、草由来の風味と黄色み、そして発酵の香りが重なった、個性の強いバターになります。原料も工程も手間を掛けた、いわば二重にこだわったバターです。流通量はごくわずかですが、バターの風味を突き詰めたい方には行き着く先の一つです。
保存方法
非発酵バターと同じです。
冷蔵(10度以下)で、香りが移らないよう密閉して保存します。バターは光と酸素で風味が落ちるため、包み紙のまま密閉容器に入れるのが確実です。
使いきれない分は小分けして冷凍もできます。発酵の香りは繊細なので、開封後はなるべく早く使いきるのがおすすめです。
よくある質問
Q. 発酵バターは酸っぱいのですか。
強い酸味はありません。ヨーグルトのような香りの奥行きとして感じられます。
Q. どんな料理に合いますか。
トーストやお菓子作りなど、バターの香りを主役にする使い方で違いが際立ちます。
Q. なぜお菓子作りに好まれるのですか。
焼成の熱で発酵由来の香りが立ち、風味に深みが出るためです。クロワッサンやフィナンシェが代表例です。
Q. 発酵バターは体に良いのですか。
発酵の有無で優劣を断定できる根拠はありません。風味の違いとしてお選びください。
Q. グラスフェッドの発酵バターもありますか。
あります。草由来の風味と発酵の香りが重なった、個性の強いバターになります。
Q. 保存方法は違いますか。
非発酵バターと同じです。冷蔵で密閉保存し、長期保存は小分け冷凍が使えます。
Q. バターミルクとは何ですか。
チャーニングでバター粒を取り出したあとに残る液体です。発酵バターのバターミルクにはかすかな酸味があり、海外ではパンケーキなどの材料として親しまれています。
Q. 「醗酵」と書かれることもありますか。
同じ意味です。表記の違いだけです。
関連する用語
出典
乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)── バターの成分規格(乳脂肪分80.0パーセント以上・水分17.0パーセント以下)
この記事はミルクデザイン株式会社が作成しています。北海道紋別郡西興部村で、萩原牧場のグラスフェッド生乳から牛乳・ヨーグルト・バター・チーズ・アイスクリーム・ソフトクリームを製造しています。


