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話題のA2ミルクを知る

更新日:2月9日

2024年頃から日本で話題となり始めたA2ミルク。健康志向の高まりとともに「A2ミルク」という言葉を耳にする機会が増えています。しかし、A2ミルクとは一体何なのか、普通の牛乳と何が違うのか、ご存じでしょうか?本記事では、A2ミルクの特徴やメリットについて紹介します。




 

A2ミルクとは

A2ミルクとは、「A2型β-カゼイン」 のみを含む牛乳のことを指します。通常の牛乳には「A1型β-カゼイン」と「A2型β-カゼイン」の両方が含まれていますが、A2ミルクはA1型を含まない点が特徴です。

この違いが注目される理由は、A1型β-カゼインが消化される過程で 「β-カソモルフィン-7(BCM-7)」 というペプチドを生成することにあります。このBCM-7が、一部の人に消化不良や胃腸の不快感を引き起こす可能性があると言われています。A2ミルクはBCM-7を生成しないため、より消化しやすい牛乳として注目されています。


A2ミルクの主な健康についてのメリットは以下の2点です。


  1. 消化がしやすい

    A1型β-カゼインを含まないため、A2ミルクは一般的な牛乳よりも消化しやすいとされています。特に、牛乳を飲むとお腹がゴロゴロする人にとって、A2ミルクは適した選択肢となる可能性があります。


  2. 乳糖不耐症の人にも飲みやすい?

    乳糖不耐症は乳糖(ラクトース)を分解できないことで起こる症状ですが、A2ミルクは通常の牛乳と同じく乳糖を含んでいます。それでも、「牛乳を飲むとお腹の調子が悪くなるが、A2ミルクなら大丈夫だった」という人もいます。これは、乳糖ではなくA1型β-カゼインによる影響を受けていた可能性があります。


BCM-7とは

A2ミルクの前段の説明で、消化不良や胃腸の不快感を引き起こす可能性の原因として紹介したBCM-7とはいったい何者なのでしょうか。ここからは、BCM-7のメカニズムや科学的な研究、実験データについて詳しく解説します。


牛乳には β-カゼイン というタンパク質が含まれています。このβ-カゼインには「A1型」と「A2型」があり、通常の市販の牛乳には A1型β-カゼイン を含むものが多く出回っています。

A1型β-カゼインを消化する際、体内の消化酵素によって 「β-カソモルフィン-7(BCM-7)」 というペプチド(タンパク質の分解産物)が生成されます。一方、A2型β-カゼインはBCM-7を生成しません。

BCM-7は オピオイド様ペプチド(モルヒネのような作用を持つペプチド)であり、腸のオピオイド受容体と結合することで消化管の機能に影響を与える可能性が指摘されています。


BCM-7が健康に及ぼす影響については、多くの研究が行われています。特に、消化不良や腸内環境への影響 について議論されています。


  1. BCM-7と胃腸の不快感

    2009年の研究(Pal et al., 2009, European Journal of Clinical Nutrition)この研究では、A1型β-カゼインを含むミルクを飲んだグループと、A2ミルクを飲んだグループでの消化の違いを比較しました。その結果、A1ミルクを摂取したグループでは 消化の遅延、腹部の不快感、膨満感 などが報告されました。

    2016年の臨床試験(Jianqin et al., 2016, Nutrition Journal)中国で行われたこの研究では、乳糖不耐症の症状を持つ45人を対象 に、A1ミルクとA2ミルクの影響を比較しました。結果として、A1ミルクを摂取したグループでは 下痢や腹痛が有意に多く、A2ミルクでは症状が軽減されたことが確認されました。この研究は「A1ミルクではBCM-7が腸のオピオイド受容体に作用し、腸の動きを抑制する可能性がある」と示唆しています。


  2. BCM-7と腸の透過性(リーキーガット症候群)

    2014年の研究(Ul Haq et al., 2014, International Journal of Food Sciences and Nutrition)この研究では、BCM-7が腸の細胞に与える影響を調べました。その結果、A1ミルクを摂取した場合、腸の細胞間の密着結合(タイトジャンクション)が弱まり、「リーキーガット(腸漏れ)」を引き起こす可能性が示唆されました。リーキーガットは、アレルギーや炎症性腸疾患(IBD)などのリスクを高めると考えられています。


BCM-7は乳糖不耐症とは違うのか?
胃腸の不快感を引き起こすことから、BCM-7の影響と乳糖不耐症はよく混同されがちですが、2つは異なる事象です。

乳糖不耐症 は、乳糖(ラクトース) を分解する酵素(ラクターゼ)が不足することで起こります。A1ミルクの影響 は、β-カゼインの違いに由来し、乳糖不耐症でない人でもA1ミルクを消化する際に BCM-7の作用 によって胃腸の不快感を感じる可能性があります。

このため、乳糖不耐症の診断を受けていなくても、A1ミルクが合わない人にとって、A2ミルクがより消化しやすい選択肢となる可能性が考えられます。


BCM-7は、A1型β-カゼインを含む牛乳を消化する際に生成されるペプチドで、消化不良や腸内環境に影響を与える可能性があると考えられています。研究によると、A1ミルクを飲んだグループでは胃腸の不快感や腸の透過性が増加した ことが報告されています。

一方で、A2ミルクはBCM-7を生成しないため、牛乳による不快感を軽減できる可能性があります。健康志向の高まりとともに、A2ミルクへの関心が世界的に広がっており、日本でも今後A2ミルクが購入しやすくなっていく可能性があります。


 
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