DXの活用で消費者と生産者の結び付きを強めることが、食品ロスの削減につながるかもしれません。
食品ロスは世界的な課題
「食べることができたのに廃棄される食品(食品ロス)」が世界で年間13億トン発生し、生産された食料の3分の1が廃棄されているそうです。食料が足りない国がある一方で、大量の食料が廃棄されているという矛盾をどのように解決するのかが、世界的な課題となっています。
この課題に対して国連はSDGsの目標12で、「生産者も消費者も、地球の環境と人々の健康を守れるよう、責任ある行動をとろう」と呼びかけるとともに、具体的には同ターゲット12.3で、「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる」と、関係するすべての人々や組織に対して課題解決に向けた行動を求めています。
日本政府も食品ロスを減らすことは重要な課題であると認識しており、2019年には「食品ロスの削減の推進に関する法律(2019年5月31日交付、同10月1日施行)」が制定されました。
ちなみに、環境省の推計によれば、日本での食品ロスの発生量は570万トン(2019年度)。これは、世界で飢餓に苦しむ人々に向けた食料援助量(2020年で年間約420万トン)の約1.4倍に相当する膨大な量です。
食品ロス問題は「もったいない」の問題にとどまらない
国連や日本政府が食品ロス問題を重視するのは、単に「もったいない」の問題にとどまらず、それに関連してして直接的に、あるいは間接的に以下のような様々な問題が発生するためです。
・廃棄物の焼却にともなうCO2の発生
・食料廃棄のための費用負担(多額の税金投入)
・結果的に食品ロスとなる食品製造のために投入された資源(水やエネルギー)の浪費
ところで、国内の食品ロス570万トンのうち、生産者や小売りなど事業者が出す量は309万トン(全体の約54%)、家庭が出す量は261万トン(同約46%)です。このうち、事業者が出す食品廃棄物は、「産業廃棄物」や「事業系一般廃棄物」として事業者自身が費用を負担した上で、その85%がリサイクルされて肥料や飼料になり、残りの15%が焼却処分されているとみられています(※)。
※農水省による推計(2019年度)
一方、食品ロスの46%を占める家庭から出る食品廃棄物は、自治体により生ごみとして回収されてほとんどが焼却処理されます。ただ、その際に発生するCO2が地球温暖化の要因になってしまいます。また、可燃ごみの回収や処分のための費用は自治体等が負担しており、そのために多額の税金が投入されています(食品ロスの処分だけで年間1,800億円の税金が使われているとの推計もあります)。さらに、食品ロスになった食品を作るために投入された水資源や電力などのエネルギーは、無駄に消費されたことになります。
このように、食品ロス問題を解決しようとする取り組みは、食料の世界的な適正配分につながるだけでなく、気候変動や経済格差などの様々な課題の解決に向かう取り組みです。
食品ロス問題は「もったいない」の問題にとどまらない
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