米先物市場で2022年4月22日現在、ミルクの価格が今世紀では最も高い水準にまで押し上げられています。
ミルク先物は最高値を試す動き
株式取引をされる方ならば、米国のシカゴマーカンタイル取引所(CME)で様々な先物取引が行われていることをご存じでしょう。CMEの日経225先物は日本のメディアでその値動きが日々報道されています。そのCMEに、乳製品の先物やオプションが上場しています。
中でも取引量の多いⅢ級ミルク先物(※)の先週末の終値(2022年4月22日)は、100ポンド(約45.36 kg)当り24.32ドルと昨年末から32%の大幅上昇を記録し、直近の高値である24.55ドル(2020年7月31日)まであと少しの水準まで上昇しています。なお、ほぼ同水準にある2014年9月30日の24.58ドルが、2000年以降では最高値です。言い換えれば、あと0.32セント(1.3%)上昇すれば、21世紀では最高値になります。
※Ⅲ級ミルクは、アメリカンチーズの製造に使用される「チーズミルク」です。
ちなみに、農産物や乳製品の先物価格が上昇している主な理由をあげると以下の通りです。
・世界人口の増加と所得向上による食糧価格の上昇
・人件費の上昇を伴う米国の物価上昇
・気候変動(渇水など)による不作への警戒感
・エネルギー価格の上昇
・ウクライナ問題
これらの要因が絡み合って世界的な食料価格の上昇が続いており、そのトレンドの中にミルク市場も巻き込まれている格好です。足下では穀物価格を押し上げるウクライナ問題も深刻です。ロシアとウクライナを合わせた世界の小麦生産量は14%で、同じく小麦輸出量の29%を占めており、また世界のトウモロコシ輸出の17%を占めているためです。さらに、ミルク価格に限れば、アジアの所得向上により乳製品の需要が高まっていることもミルク価格の上昇に寄与しています。
農家を守るための先物
ところで、CMEはもともとトウモロコシなど穀物の先渡し取引を行う場所として創設されました。その後は先物取引を開始し、穀物だけでなく肉や牛などの食料、銀などの貴金属、さらに通貨や金利、株価指数などの金融商品の先物に取引範囲が広がっていきました。農産物に比べて金融商品の方が取引規模が巨額ですし、日本人から見れば米S&P500や日経平均などの金融商品の方に関心を持つ人が多いため、CMEと言えば金融商品に目が行きがちです。ただ、CMEの開設当初の主な役割は、農家に価格ヘッジ手段を与えることでした。
農作物は種まきから収穫までに時間がかかるため、その間に農家は様々なリスクを負うことになります。その中でも大きなリスクが作物の売り値です。天候が良くて豊作となることは農家にとっては一見うれしいことのようですが、農作物の供給拡大で作物価格が値下がりしてしまいます。
その結果として農家の売上がコストを割り込むこになれば、損失が発生してしまいます。とはいえ、豊作になるかどうかは天候次第であり、農家がコントロールできな要因です。このリスクを回避するために登場したのが先物取引です。農家は収穫までのどこかの時点で先物を売ることによって、収穫時期の売り値(売上)を確定することができまするため、その後は価格変動を心配しないで済むことになるのです。
ちなみに、農家が先物を売る際に買い手となるのは、実際に農作物を買おうとしている企業(商社やメーカー、小売り業者)と投機筋です。買い手となる企業は先物を使って早めに作物を手当てしておけば、その後の値上がりを心配しなくて済むようになります。
一方、投機筋は先物価格の値上がりを期待して先物を買う、あるいは値下がりを期待して先物を売ります。彼らの狙いは売値と買値の「値ざや」です。ただ、そのような投機筋が市場に存在することで売買が活発となり、いわゆる実需筋の農家や企業は売りたいときに売り、買いたいときに買うことができるのです。
日本の輸入価格への影響も
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