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古代より続く酪農は未来への希望

約1万年にわたり人類を支えてきた酪農は、世界人口の増加などの新たな局面の中で一段と重要性を増すとみられます。


古代より続く酪農

古代エジプトの壁画に、牛からミルクを絞る人が描かれています。紀元前2371-2350年頃のファラオ(王)であったウナス(第5王朝)の治世下、王に仕えた貴族の墓に壁画は残されており、牛の横から搾乳している姿がはっきりと見て取れます。


人が牛乳を飲んでいた記録は、紀元前3000年頃のメソポタミアにも残されています。同地に住んでいたシュメール人は牛乳を搾って神に捧げるとともに、貴族階級がそれを飲んでいました。その当時に描かれた絵からは、エジプトとは異なり牛の真後ろに座って後ろ足の間から搾乳していたことが分かります。とりわけ搾乳の様子がわざわざ壁画になっていることは、その当時の人々にとって牛乳が重要な食品であったことの証左でしょう。


ところで、最初にミルクをとるために飼った家畜はヤギや羊だったようです。おとなしい性質で飼い慣らすのがやさしかったからでしょう。ヤギは西アジアで今から約10000〜11000年前に、野生種を飼い慣らしたようです。それに続いて牛は今から9000年前までにサハラ東部で家畜化されました。ただ、牛を飼う目的は当初、肉をとるためだったとみられています。狩猟をするより家畜化した方が、安定して肉を確保できるからです。


その後、牛を飼う目的に搾乳が加わり、さらにチーズやヨーグルトなどの乳製品を作り出すことになります。実際、ミルクに含まれる脂肪やタンパク質を活用して、食品製造を行った証拠が世界の各所で見つかっています。たとえば、新石器時初期(紀元前6000年~7000年)のアナトリア半島(トルコのアジア部分)、紀元前5000~6000年の東ヨーロッパ、またアフリカや北ヨーロッパ、イギリスなどです。


チーズは新石器時代の発明品

さて、ミルク(生乳)をチーズにすれば、ミルクそのものより長期に保存することができます。これは、家畜を飼い始めた当時の人々にとって画期的な発明だったでしょう。ミルクをチーズに変えることで、栄養価が高くおいしい食品を長期に保存できるからです。そのため乳製品は貴重な食品であったはずですし、それを作り出す牧畜が重要な仕事であったことは間違いありません。


そのチーズを作る方法は、その当時においてすでに確立されていたようです。チーズを作るためには、ミルクを発酵させたのちに酵素を加えて「カード」と呼ばれる凝固物を作る一方、そこからホエイ(乳清)と言われる水分を抜き出す必要があります。現代ではプラスチックの濾し器(こしき)にフィルターとなる布を入れてホエイを取り除く方法などがありますが、この作業を紀元前5000年前にも行っていたようです。


というのも、新石器時代に当る紀元前4800~5200年頃の穴が開いた土器が、中央ヨーロッパの内陸部で見つかっているのです。ポーランドのヴィスワ川の集落跡で見つかった土器の破片を分析したところ、乳製品の残留物や乳脂肪の反応があったことを受けて、ホエイを抜き取るために穴あき土器が使わた可能性があるとみられています。


国内酪農の重要度が上昇

このように、酪農の歴史はいまから1万年前までさかのぼりますが、その大昔から今日まで、ミルクや乳製品は人類の貴重な食料として、その存続と繁栄を支えてきました。したがって、これからの人類にも欠かせない食料として守っていく必要があるでしょう。


特に、世界的な人口増加によりたんぱく質(食品)が不足するとの指摘があり、たんぱく質の確保が人類にとっては重要な課題になってきます。現実問題として、2021年現在で約79億人の世界人口が、約30年後の2050年には100億人にまで増加すると予想されている以上、この問題は避けて通れません。


そうした状況を踏まえると、人間が食べられない草(牧草)を餌にして、ミルクという形でたんぱく質を作り出してくれる牛を育てる酪農は、未来の人類にとっても重要な産業と位置付けられるはずです。さらに、各国が自国の食料確保を進める中で、日本国内の酪農に対する期待が改めて高まる時期が来るのではないでしょうか。


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