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グラスフェッドミルクは土が大事

本当に美味しく栄養価の高いグラスフェッドミルク(牧草と放牧で育てた牛のミルク)を作るためには、牛にバランスの良いグラス(草)を与えることが必要であり、さらにその草を育てるためには土にこだわることが重要です。ワインと同じく、土こそが最高品質のグラスフェッドミルクを生み出す秘訣です。

<北海道西興部村 萩原牧場の風景 2022年6月>


グラスフェッドにはバランスの良い草

牧草に生えている草は、いわゆる雑草ではありません。牧草の草は牛に与える餌として、その量や栄養分を考え、また土地の状態や気候・季節に適合するように研究した上で、最適な種類の草の種をまいて育てたものです。牧場に行くと、そこに至る道路わきに生えている草(雑草)と、牧場の草は明らかに違うことが分かります。


牧草の種類は、牛にバランスの良い栄養を与えるために5~6種類にも及びます。たとえば、牧草として育てるクローバーはマメ科の植物でタンパク質が多く含まれており、牛が好んで食べる草です。ただ、クローバーは背丈が低く小さな草ですので、これだけだと牛のお腹は一杯になりません(エネルギーが足りません)。そこで、イネ科の背丈が高くなる草の種をまくことで、牛のお腹を充たすように工夫するのです。


このようにグラスフェッド酪農では、最高品質のミルクやバター、チーズを作るために、牛に対して十分に考え抜かれたバランス良い牧草を牛に与えています。同時に、広い牧草地の中で、牛を日々移動させることにより、牛が常に新鮮な草を食べることができる環境を作っています。


良い牧草は良い土に育つ

その際に大事なことは、良い牧草が育つ土を作ることです。健全な土でなければ、牧草が期待通りすくすくと育ってくれません。土の養分が不足していれば草は貧弱になり、それを食べる牛、そこからとれるミルクも最高品質のものにはなりません。


そのため、グラスフェッドミルクを作る酪農家は、何年もかけて良い牧草が育つ土を作っていきます。たい肥などの肥料をまいて窒素・リン酸・カリウムという肥料の三要素に気を配り、また雨などの影響で土地が酸性に傾かないような努力も必要です。それでも、毎年土の状態は変わっていきますので、それを見極めながら適切に対応していく必要があります。


このように、最高品質のグラスフェッドミルクを作ろうとすると、長い期間をかけた土づくり、最適なバランスの牧草の育成、そして放牧という途方もなく手のかかる作業が必要になります。逆に、そのことが国内でのグラスフェッドミルクが希少な存在となる要因の一つです。


土が香りの違いを生む

実は、どのような土が使われたのかは、ミルクが凝縮されたチーズになると、その香りに現れてきます。もちろん、チーズの香りは職人の技術が生み出す部分が大きいのですが、素材であるミルクの基となったなった土の状況が反映されることは確かです。


このことはワインに似ています。同じ品種のブドウ(ピノ・ノワールやカベルネ・ソーヴィニヨンなど)を使っても、ブドウの産地によってワインの味が大きく異なることに近い現象が、チーズなどの乳製品においても起こります。日照のなどの違いだけでなく、土の違いがぶどうを通じてワインの味に反映されるのと同じように、乳製品も牧草の土次第でその香りが異なってきます。


ちなみに、チーズ大国フランスでは「村の数だけチーズがある」と言われ、地域ごとにチーズの味が異なります。もちろん、ミルクの種類(牛かヤギか)や職人技が大きく影響していることは確かですが、そもそもどういった風土(空気と土と水)で育ったのかが、チーズの違いを生み出している部分も大きいでしょう。


ということで、美味しいミルクやチーズを選ぶには、そもそも酪農にどのような土(風土)が使われているのかが重要です。それが味の違いになって現れます。


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