食が細る親と乳たんぱく
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更新日:20 時間前
「食が細いから、少しでいい」は、高齢の体には逆かもしれない。
「最近、親の食が細くなった」。そう感じる家族は少なくない。年齢とともに食欲は落ち、食べられる量も減る。だが同じ頃、体の中では見えにくい変化も進む。筋肉が少しずつ減り、立つ・歩く・つまずかない日常の力に関わってくる。食が細る時期に、何を優先して口に入れるか。手がかりを、査読論文から整理したい。
高齢期は、若い頃より多くのたんぱく質が必要だと複数の専門家が提言している。ところが食が細ると、量でたんぱく質を稼ぐのは難しくなる。そこで着目されるのが、少量でも良質なたんぱく質とカルシウムを含み、調理がほとんど要らない乳製品だ。牛乳やヨーグルトなら、噛む力や食欲が落ちても取り入れやすい。乳たんぱくが筋肉量の維持に役立つ可能性は研究で報告されているが、「飲めば筋肉がつく」という単純な話ではない。あくまで条件つきの手段として見ていきたい。
なぜ「質」と「量」の両方なのか
若い体は、たんぱく質を口にすると筋肉づくりのスイッチが入りやすい。しかし加齢とともに、この反応は鈍くなる。同じ量を食べても筋肉の合成が起きにくい状態は「同化抵抗」と呼ばれ、高齢者が若年より多くのたんぱく質(体重1kgあたり少なくとも1.0〜1.2g)を要する理由の一つとされる[1]。必要量は上がるのに、食が細って摂取量は下がる——この逆行が問題になる。鍵を握るのは、たんぱく質の「質」だ。乳清(ホエイ)は必須アミノ酸、とりわけ筋肉合成の引き金となるロイシンを多く含む。健康な高齢者を対象にした無作為化試験では、ホエイとロイシンを強化した食品が、通常の乳製品より食後の筋たんぱく合成率を高めた(毎時0.078対0.057%)[3]。少量で良質なたんぱく質を含み、カルシウムも同時に摂れ、手間もほとんどない——乳製品が小食の高齢者に向く理由はここにある。ただし「たんぱく質さえ摂れば筋肉は増える」わけではない。合成のスイッチは、体を動かす刺激と組み合わさって初めて十分に働く。歩く・立つといった負荷との併用が前提になる。だからこそ、質・量・運動の三つがそろって、初めて意味を持つ。
では、証拠はどこまで強いのか。乳たんぱくを扱った系統的レビュー・メタ解析では、摂取によって四肢の筋肉量がわずかに増えた(0.13kg、95%信頼区間0.01〜0.26)一方、握力や脚の筋力には有意な改善がみられなかった[2]。効果は「あるが控えめ」で、重い有害事象の報告もなかった[2]。別の系統的レビューも、乳製品の摂取がフレイルやサルコペニアの危険度を下げうると報告しつつ、証拠はまだ限られると断っている[4]。つまり現時点は「有望だが確定ではない」。加えて、重い腎臓病がある人はたんぱく質を控える必要があり、専門家の提言でも例外とされている[1]。持病がある場合は、主治医への相談が欠かせない。
食卓で、今日からできること
できることは、難しくない。食が細っても、コップ一杯の牛乳や小鉢のヨーグルトなら、無理なく一日の中に足せる。特別な調理も準備も要らない。朝食に一品、間食に一つ——「量」で疲れてしまう前に、少量で質の高いたんぱく質を先に確保する、という発想だ。乳製品が苦手なら、卵や豆腐、魚など他の良質なたんぱく源でもかまわない。大切なのは、細った食事の中で優先順位を組み替えること。そして、散歩や立ち座りといった軽い活動と組み合わせること。これは食事を薬に置き換える話ではなく、選べる手立てを一つ増やす話だ。だから親にも、こう言える——「全部食べなくていい。まず、これだけ先に飲もう」。
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出典
Bauer J, Biolo G, Cederholm T, et al. Evidence-based recommendations for optimal dietary protein intake in older people: a position paper from the PROT-AGE Study Group. J Am Med Dir Assoc. 2013;14(8):542-559. doi:10.1016/j.jamda.2013.05.021(PMID: 23867520)
Hanach NI, McCullough F, Avery A. The Impact of Dairy Protein Intake on Muscle Mass, Muscle Strength, and Physical Performance in Middle-Aged to Older Adults with or without Existing Sarcopenia: A Systematic Review and Meta-Analysis. Adv Nutr. 2019;10(1):59-69. doi:10.1093/advances/nmy065(PMID: 30624580)
Luiking YC, Deutz NEP, Memelink RG, Verlaan S, Wolfe RR. Postprandial muscle protein synthesis is higher after a high whey protein, leucine-enriched supplement than after a dairy-like product in healthy older people: a randomized controlled trial. Nutr J. 2014;13:9. doi:10.1186/1475-2891-13-9(PMID: 24450500)
Cuesta-Triana F, Verdejo-Bravo C, Fernández-Pérez C, Martín-Sánchez FJ. Effect of Milk and Other Dairy Products on the Risk of Frailty, Sarcopenia, and Cognitive Performance Decline in the Elderly: A Systematic Review. Adv Nutr. 2019;10(suppl_2):S105-S119. doi:10.1093/advances/nmy105(PMID: 31089731)
この記事はミルクデザイン株式会社が作成しています。北海道紋別郡西興部村で、萩原牧場のグラスフェッド生乳から牛乳・ヨーグルト・バター・チーズを製造しています。


