グラスフェッドとは
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更新日:16 時間前
グラスフェッドとは、牛や羊などの反芻動物を牧草・粗飼料を主体に育てる飼い方、およびその乳や肉のことです。日本の畜産で使われる濃厚飼料(穀物)は87%を輸入に頼っており、穀物を主体とする飼い方が主流であるため、グラスフェッドは国内では少数派にとどまります。この記事では、言葉の意味、対義語との違い、日本で少ない理由、表示の基準、乳製品に現れる違い、選ぶときの確認ポイントまでを順に整理します。
3行でわかる
英語の grass(草)と fed(与えられた)から成る言葉で、飼料が草か穀物かという飼い方の区別を指します。
グラスフェッドと名乗ってよい条件を定めた統一の公的基準は、日本にも米国にもありません。
飼料が変われば乳も変わります。牧草に多いβ-カロテンは乳脂肪に移るため、バターの色が濃くなります。

グラスフェッドとグレインフェッドの違い
対になる言葉が、グレインフェッド(grain-fed/穀物肥育)です。
とうもろこしや大豆かすなどの濃厚飼料を主体に与える飼い方を指します。
グラスフェッド | グレインフェッド | |
主な飼料 | 牧草・乾草・サイレージなどの粗飼料 | とうもろこし等の穀物(濃厚飼料) |
飼い方 | 放牧または粗飼料主体の給与 | 牛舎での給与が中心 |
乳・乳脂肪の色 | 濃い黄色になりやすい | 淡い色になりやすい |
飼料の調達 | 草地の面積と気候に左右される | 輸入穀物の相場に左右される |
日本での位置づけ | 少数 | 主流 |
色の違いは、牧草に含まれるβ-カロテンが乳脂肪に移ることによるものです。
バターやチーズで違いが見えやすく、牛が食べている草の状態によって、季節でも濃さが動きます。
どちらが正しい飼い方か、という話ではありません。グレインフェッドは、限られた土地で安定して多くの乳を搾るための合理的な方式です。日本の牛乳の安定供給は、この方式に支えられてきました。グラスフェッドは、その主流とは別の価値──草の風味、季節の変化、土地の個性──を選ぶ飼い方です。
似た言葉の整理
グラスフェッドの周辺には、意味の近い言葉がいくつもあります。混同しやすいので、切り口の違いで整理します。
言葉 | 切り口 | 意味 |
グラスフェッド | 飼料 | 牧草・粗飼料を主体に育てる |
100%グラスフェッド | 飼料 | 生涯を通じて牧草・粗飼料のみで育てる |
グラスフィニッシュ | 飼料 | 仕上げの期間だけ牧草で育てる |
放牧 | 飼い方 | 牛を屋外の草地に放して飼う(飼料は問わない) |
オーガニック(有機) | 生産方法 | 農薬・化学肥料・飼料などが有機認証の基準を満たす |
放牧していても穀物を多く与える牧場はあり、逆に舎飼いで牧草主体の牧場もあります。「放牧=グラスフェッド」ではない点に注意してください。
オーガニックも別の軸の言葉です。グラスフェッドは飼料の種類を指し、有機認証の有無とは独立しています。片方だけを満たす場合もあります。
なぜ日本ではグラスフェッドが少ないのか
飼料の自給率を見ると、理由がはっきりします。
農林水産省の資料によれば、令和4年度(概算)の飼料自給率は全体で26パーセント。内訳は粗飼料が78パーセント、濃厚飼料が13パーセントです。
粗飼料は国内でまかなえている一方、濃厚飼料は87パーセントを輸入に頼っているという構造です。
つまり日本の畜産は、輸入した穀物を前提に組み立てられています。広大な大地のイメージがある北海道でも、牛舎の中で濃厚飼料を与えて育てる舎飼いが酪農全体の約9割を占めます。
牧草主体に切り替えるには、それだけの草地の面積が要ります。牛は1日に大量の草を食べるため、頭数に見合う草地がなければ成り立ちません。
さらに雪国では、雪に覆われる期間を含めた一年分の粗飼料を、夏のうちに乾草やサイレージとして蓄えておく設計が必要です。土地と気候の制約が、そのまま参入の壁になります。
グラスフェッドと名乗る基準はあるのか
統一された公的基準はありません。
米国では農務省の農業マーケティング局が、2007年にグラスフェッド表示の任意基準を定めていました。しかしこの基準は、2016年に撤回されています。表示基準の策定が同局の法的権限の範囲に収まらない、という理由です。
以後、米国では民間の認証基準に委ねられています。
日本では、放牧そのものに関する民間の認証制度は存在しますが、グラスフェッドという表示を規定した公的な基準は定められていません。
そのため、この言葉を使う事業者には、自分の定義を自分で明示する責任があります。
何をどれだけ与えているのか。放牧はいつからいつまでか。書かれていなければ、買う側には確かめようがありません。
乳と乳製品に現れる違い
飼料の違いは、乳の中身に現れます。
いちばん分かりやすいのは色です。青草に多く含まれるβ-カロテンが乳脂肪に移るため、放牧の季節のミルクは黄色みを帯びます。バターにすると違いは一目で分かります。
風味も変わります。牧草で育った牛のミルクは、すっきりとして後味が軽いと表現されることが多く、青草の季節にはほのかな草の風味が現れます。
脂肪の中身についても、牧草主体で育てた牛の乳ではオメガ3系脂肪酸やCLA(共役リノール酸)の割合が高い傾向が報告されています。ただし季節や個体による変動も大きく、数値は一定ではありません。優劣を断定できる段階ではなく、「飼料が脂肪の構成に影響する」という理解が正確です。
そしてもう一つの特徴が、季節変化です。夏は青草、冬は蓄えた乾草やサイレージと、牛の食べる草が変わるため、ミルクの風味と色も一年の中でゆるやかに動きます。均一であることを求める工業製品とは逆の、農産物としての性格です。
この個性は、ミルクをそのまま飲むときだけでなく、ヨーグルトやチーズ、バターに加工したときにも引き継がれます。とくにバターは乳脂肪のかたまりなので、色と風味の違いがいちばんはっきり現れる乳製品です。
選ぶときの確認ポイント
基準がない以上、頼りになるのは生産者の説明の具体性です。次の3点を確認してください。
飼料の説明があるか。「牧草主体」とだけ書くのは簡単です。夏と冬に何を与えているかまで書かれているかを見ます。
放牧の期間が書かれているか。「放牧しています」ではなく、いつからいつまで放牧するのかが手がかりになります。
どの牧場のミルクか分かるか。複数の牧場の乳を混ぜる一般的な流通では、飼い方の個性は製品にたどり着く前に消えます。単一牧場(シングルオリジン)であれば、説明と中身が一対一でつながります。
裏を返せば、この3つに答えられる生産者のグラスフェッドは信頼できます。基準がない言葉だからこそ、隠さず書いているかどうかが、いちばんの見分け方になります。
よくある質問
Q. グラスフェッドとオーガニックは同じ意味ですか。
別のものです。グラスフェッドは飼料の種類を指し、オーガニック(有機)は農薬・化学肥料・飼料の生産方法などについて有機認証の基準を満たしていることを指します。片方だけを満たす場合もあります。
Q. グラスフェッドバターはなぜ黄色いのですか。
牧草に多く含まれるβ-カロテンが乳脂肪に移るためです。牛が食べている草の状態によって濃さが変わるため、季節による差も出ます。
Q. 100パーセント・グラスフェッドとは何が違うのですか。
生涯を通じて牧草だけで育てる場合と、途中まで穀物を与えて仕上げだけ牧草にする場合とで、同じグラスフェッドの語が使われることがあります。どちらを指しているかは、事業者の説明を確認する必要があります。
Q. 牛にとって草を食べるのは自然なことですか。
牛は反芻動物で、4つの胃と微生物の働きによって草の繊維を分解する仕組みを持っています。草を消化できること自体は、牛が本来もつ機能です。
Q. グラスフェッドの乳製品は味が違いますか。
飼料が変われば乳の風味も変わります。ただし味の感じ方には個人差があり、殺菌方法や製造工程によっても左右されます。飼い方だけで味が決まるわけではありません。
Q. グラスフェッドビーフとグラスフェッドミルクは同じ考え方ですか。
同じ「草で育てる」という飼い方を、肉用牛に当てはめたのがグラスフェッドビーフ、乳用牛に当てはめたのがグラスフェッドミルクです。日本ではどちらも少数派です。
Q. 国産のグラスフェッド乳製品は買えますか。
数は少ないものの、取り組む牧場・工房はあります。生乳の流通の仕組み上、一般のスーパーには並びにくいため、産直やオンラインショップが主な入り口になります。
関連する用語
出典
農林水産省 畜産局飼料課「飼料をめぐる情勢」飼料自給率の現状と目標(令和4年度概算:飼料全体26パーセント/粗飼料78パーセント/濃厚飼料13パーセント)
U.S. Department of Agriculture, Agricultural Marketing Service.「Withdrawal of United States Standards for Livestock and Meat Marketing Claims」Federal Register, Vol. 81, No. 7, 2016.
この記事はミルクデザイン株式会社が作成しています。北海道紋別郡西興部村で、萩原牧場のグラスフェッド生乳から牛乳・ヨーグルト・バター・チーズ・アイスクリーム・ソフトクリームを製造しています。


