top of page

A2ミルクのアイスクリーム

  • 7 分前
  • 読了時間: 6分

アイスクリームは乳を最も濃く食べる形です。原料の違いを議論するなら、薄める飲用よりも濃縮する冷菓のほうが土俵として正しいと言えます。A2ミルクをアイスクリームや乳製品に加工したときに何が起きるのか、その仕組みと事実を整理します。



アイスクリームは乳成分を高い密度で味わう食品です


アイスクリームは、牛乳から水分を減らし、乳脂肪分と無脂乳固形分を凝縮して凍らせた食べ物です。液体の牛乳として飲むよりも、乳の成分を高い密度で摂取することになります。原料となる乳の性質が、そのまま食感や風味に直結する構造を持っています。

この原料の選択肢の一つとして、A2ミルクがあります。「A2ミルク」とは、βカゼイン遺伝子がA2A2型の牛だけから搾った乳を指す慣用的な呼称です。牛乳のタンパク質に含まれるβカゼインは、209個のアミノ酸から成り立っています。このアミノ酸の配列において、N末端から67番目がプロリンであればA2型となり、ヒスチジンであればA1型となります。

牛は父方と母方から1本ずつ遺伝子を受け継ぎます。そのため、牛の遺伝子型はA1A1、A1A2、A2A2の3通りが存在します。A2ミルクを作るには、A2A2型の牛だけを選んで搾乳し、A1A2型やA1A1型の牛の乳が混ざらないように集乳から製造までの工程を管理する必要があります。アイスクリームのように成分が濃縮された食品を選ぶとき、原料の素性を確かめるのは理にかなった行動です。次の節では、このA2ミルクを加工した際に何が起きるのかを具体的に見ます。



A2ミルクの加工特性には相反する研究報告が存在します


A2ミルクをヨーグルトやチーズに加工した際の影響については、査読論文の結論が割れています。A2ミルクが加工に向くという側面と、向かないという側面の両方を把握する必要があります。

ヨーグルトに関しては、A2型の乳で作ったゲルは弾性率が低く、より多孔質でタンパク質鎖が細い微細構造になるという報告があります。Jミルクはこれを受けて、A2ミルクはA1ミルクと比較すると柔らかくクリーミーなヨーグルトの製造に適している可能性があり、逆に、ゲル強度が高く安定した硬さのあるカードのヨーグルト製造には向かない可能性も考えられると整理しています。アイスクリームにヨーグルトを混ぜ込む場合など、この物性の違いが影響する可能性があります。

チーズ製造への影響については、さらに見解が分かれています。2025年に米国の乳製品科学の学術誌誌に載ったイタリアの試験では、A2型の乳はA1/B型の乳よりレンネット凝固時間が2.8分長く、熟成前後とも収量が下がり、できたチーズの硬さと弾力も低かったと報告されました。この試験は33回の実地チーズ製造を経ており、A2乳の使用はチーズ製造の効率と技術的性能を下げるという結論を出しています。ただし、この試験はA2プールとA1/Bプールの比較であり、B型という別のバリアントが混ざっているため純粋なA1対A2の比較ではない点に留意が必要です。

一方、2022年に食品科学の専門誌に載ったスペインの試験は、公的資金による利益相反のない研究です。ここではA2乳のほうがカードの硬度が高く(12.70対10.95)、硬化速度やチーズ収量(17.02%対12.89%)も高いという結果が出ました。この試験は、A2乳から酸凝固・レンネット凝固の乳製品を作ることは、対照乳と比べて大きな差なく可能であると結論しています。このように、加工特性については一律に断定できる段階にはありません。



「A1がゼロ」という表示には過去に公的機関の指摘があります


A2ミルクを選ぶ際、パッケージの表示をどう読むかが重要になります。ここで知っておくべき事実は、「A1が全く含まれない」と言い切る表示にはリスクがあるということです。

2003年11月21日、ニュージーランドの公正取引当局は、A2ミルクにβカゼインA1が全く含まれないと消費者に誤って示唆する表現は、公正取引法に違反するおそれがあるとして警告を発しました。その結果、A2コーポレーションとそのライセンス生産者は、販促物から完全排除を示唆する表現を削除することに同意しています。

現実の酪農現場では、搾乳機や配管、タンクを他の牛と共有することが多く、A1の乳を完全にゼロにすることは極めて困難です。そのため、正確な表現は「A1を含まない」ではなく、「A2A2型の牛だけから搾る」「A1が混ざらないように管理する」という工程の説明になります。日本A2ミルク協会の認証制度も、定期的なELISA検査でA1の混入を確認する仕組みをとっています。A1が何%未満であれば合格といった数値の閾値は、公表資料に記載がありません。売り場でアイスクリームのパッケージを見る際は、ゼロを謳う言葉ではなく、どのような管理工程を経ているかを確認します。



日本の法令におけるA2ミルクの立ち位置を確認します


売り場でA2ミルクのアイスクリームを探すとき、それがどのような基準で作られたものかを知っておく必要があります。結論から言えば、日本の食品表示基準において、A2ミルクの法令上の定義規定は見つけられませんでした。

つまり、国が定めた統一基準や公的な名称が存在するわけではありません。Jミルクも「A2ミルク」を慣用的な呼称と明記しています。現在国内で流通しているA2ミルクの認証マークは、民間の任意認証である日本A2ミルク協会が発行しているものです。

法令の定義がない以上、メーカーごとにA2A2型の牛の選別方法や、製造ラインの洗浄・切り替えの厳密さは異なります。アイスクリームは乳脂肪分が高く、乳の風味を強く感じる食品です。だからこそ、認証マークの有無だけでなく、そのメーカーがどのように牛を管理し、どのように製造ラインを分けているのかという事実を、公式サイトなどで確かめる行動が有効です。



よくある質問


Q. A2ミルクのアイスクリームは普通のアイスクリームと味が違いますか。 A2ミルクであること自体が、直ちに味の違いを生むわけではありません。アイスクリームの味は、牛が食べているエサの種類や、乳脂肪分の高さ、製造工程での空気の抱き込み方などによって決まります。βカゼインの67番目のアミノ酸の違いが直接的に味覚を左右する仕組みは確認されていません。


Q. A2ミルクを使った加工品は増えているのでしょうか。 国内でも少しずつ選択肢は増えています。ただし、北海道の生乳の多くは加工向けであり、JミルクはA2ミルクをチーズ製造に使用することは勧められないとする報告を紹介しています。A2ミルクへの転換を進める前に、カード化しにくい特性についても十分に検討しておくことが必須と指摘されており、加工品への一斉な転換には課題が残っています。


Q. パッケージに「A1不使用」と書いてあるアイスクリームは安全ですか。 「A1不使用」「A1ゼロ」と言い切る表示は、過去に海外の公的機関が問題視した表現です。牛の遺伝子検査を行い、A2A2型の牛だけから搾乳したとしても、製造ラインでの微量な混入を完全にゼロにすることは構造上困難です。「A1が混ざらないように管理している」という工程の事実を記載しているメーカーのほうが、実態に即しています。


Q. 日本のスーパーでA2ミルクのアイスクリームを見分ける方法はありますか。 パッケージに記載された民間の任意認証マークがひとつの目印になります。ただし、法令による公的な定義はないため、マークがない商品でもA2A2型の牛だけで作られている場合があります。確実なのは、メーカーが製造工程や牛の遺伝子検査について具体的に公開しているかを確認することです。



関連する用語



この記事はミルクデザイン株式会社が作成しています。北海道紋別郡西興部村で、萩原牧場のグラスフェッド生乳から牛乳・ヨーグルト・バター・チーズ・アイスクリーム・ソフトクリームを製造しています。

 
 
bottom of page