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A2ミルクはニュージーランドから来た

  • 8月18日
  • 読了時間: 6分

更新日:8月19日

A2ミルクは1990年代のニュージーランドから世界へ広がりました。同じ牛がいても、同じ商品は生まれません。A2ミルクが南半球で立ち上がったのは科学ではなく、牧場ごとに出荷できる独自の流通の形があったからなのです。



A1型βカゼインを問題視する仮説は1990年代に生まれた


牛乳のタンパク質のひとつであるβカゼインには、A1型とA2型があります。このうちA1型のβカゼインを問題視する仮説は、1990年代のニュージーランドで生まれました。欧州食品安全機関が2009年にまとめた107ページに及ぶ検証報告書には、この仮説を支えた初期研究として、エリオットらによる1997年と1999年の論文、マクラクランによる2001年の論文、ラウゲセンとエリオットによる2003年の論文が引用されています。

牛がどちらのβカゼインを作るかは遺伝子で決まります。そのため、牛の耳片や毛根から遺伝子を調べて判定します。遺伝子検査でA2型だけを出す牛を特定し、その牛の乳だけを集めるという発想が生まれました。しかし、この仮説がそのまま世界の常識になったわけではありません。



因果関係をめぐる議論には公正取引当局が介入した


新しい仮説が市場に出ると、その効果をめぐって議論が起きます。2003年11月21日、ニュージーランドの公正取引当局は、エーツーコーポレーションとそのライセンス生産者に対して警告を出しました。そして、広告からA1型βカゼインの完全排除を示唆する表現を削除させたのです。

さらに2009年1月29日には、欧州食品安全機関が検証報告書を公表します。報告書は、A1型βカゼインの消化過程で生じるペプチドの経口摂取と、示唆されている非感染性疾患の病因や経過との間に、因果関係は確立できないと結論づけました。病気との因果関係が証明されなかったにもかかわらず、A2ミルクは市場に残り続けました。その理由は科学の議論とは別の場所にあります。



牧場ごとに出荷できる流通網が商品化を支えた


A2ミルクが南半球で立ち上がったのは、牧場を丸ごと契約し、そのまま出荷できる流通の仕組みがあったからです。エーツーコーポレーションはライセンス方式を採用し、生産者にA2ミルクを作らせていました。ニュージーランドの公正取引当局の公式リリースにも、広告表現の是正に応じた相手として「エーツー社とそのライセンスを受けたエーツー生産者」と記されています。

このビジネスモデルは、実在する中核特許で守られていました。欧州特許「非糖尿病誘発性の乳またはその製品を選択する方法」は1994年11月4日を優先日とし、2015年11月3日に満了しました。米国特許「A1型βカゼインを含まない乳のための牛の育種と搾乳」は1995年5月16日を優先日とし、満了予定日の2016年5月13日を過ぎてステータスは満了となっています。特許で農場を囲い込み、混ざらないように集乳する。この流通の形を作れたことこそが最大の理由です。



日本の検査体制が整ったのは2020年代に入ってから


日本国内でA2ミルクを検査し、認証する体制が整ったのはごく最近のことです。2020年に一般社団法人日本A2ミルク協会が設立され、2024年1月22日に日本初の品質管理基準と認証制度が発表されました。同年3月1日には認証第1号の牛乳が発売され、3月4日には小学校の給食でも提供が始まっています。中核特許はすでに満了しています。ただし、名称の使い方や表示については別の権利や制度が関わるため、生産を検討する場合は個別に確認が必要です。

認証制度を支えるのは、牛の遺伝子型を調べる検査と、牛乳そのものにA1型が混じっていないかを調べる検査です。 日本A2ミルク協会の認証では、東京農業大学の庫本高志教授が開発した遺伝子型判定法が使われ、検査業務は株式会社エージーティーシーを中心に行われています。タカラバイオの遺伝子検出技術を応用し、βカゼイン遺伝子の配列がプロリンを指定する配列か、ヒスチジンを指定する配列かを検出します。

生乳の検査には、庫本教授と重井医学研究所の松山誠氏らが共同開発したサンドイッチ酵素免疫測定法が使われます。βカゼイン全般に結合する抗体とA1型だけに結合する抗体で挟む仕組みで、農場と工場で月1回の定期検査が義務づけられています。

国内の受託分析会社でも検査は受けられます。株式会社日本食品遺伝科学の純度検査は、特異的なリアルタイム遺伝子増幅法を使用し、標準の所要日数は3営業日、価格は30,000円(税別)と公開されています。学術の世界では、2023年に報告された液体クロマトグラフ質量分析のように、タンパク質を直接測る方法も存在します。この検出下限はA1型が0.22ミリグラム毎ミリリットル、A2型が0.18ミリグラム毎ミリリットルです。

今日飲む牛乳がどの牛から搾られたものか。それを確かめる技術と仕組みが整ったことで、日本のスーパーの棚にも新しい選択肢が並び始めています。次に牛乳売り場に立つときは、パッケージの裏側に書かれた検査の仕組みを想像してみてください。



よくある質問


Q. おなかの調子が悪いのはA1型βカゼインのせいですか? 欧州食品安全機関の報告書で因果関係が否定されたのは自閉症や1型糖尿病などの非感染性疾患であり、おなかの調子や乳糖不耐の症状は検証範囲に含まれていません。おなかがゴロゴロする原因がA1型βカゼインであるかどうかは、現代の科学では断定できないのが当社の見解です。


Q. A2ミルクの検査はアメリカでしかできないのですか? 日本国内でも検査は可能です。日本A2ミルク協会の認証制度で使われる酵素免疫測定法による検査のほか、株式会社日本食品遺伝科学が提供するリアルタイム遺伝子増幅法による純度検査など、国内の受託分析会社で検査を受けられます。


Q. 日本の牛からA2ミルクは搾れますか? 搾れます。牛がA2型のβカゼインを出すかどうかは遺伝子で決まるため、日本にいる牛の耳片や毛根から遺伝子を採取して検査し、A2型だけを出す牛を集めて専用の群れを作ればA2ミルクを生産できます。


Q. A2ミルクを作るには特許のライセンス料が必要ですか? 必要ありません。A2ミルクの生産に関する欧州特許は2015年に、米国特許は2016年に満了しています。現在、日本の事業者がA2ミルクを生産・販売するにあたって、これらの特許に対するライセンス契約を結ぶ必要はありません。



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この記事はミルクデザイン株式会社が作成しています。北海道紋別郡西興部村で、萩原牧場のグラスフェッド生乳から牛乳・ヨーグルト・バター・チーズ・アイスクリーム・ソフトクリームを製造しています。

 
 
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