ジャージー牛はA2が多いのか
- 8月18日
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更新日:8月20日
「ジャージー牛の牛乳ならA2ミルクだろう」という期待は、半分当たっていて半分外れています。牛がA1型とA2型のどちらのβカゼインを作るかは品種ではなく、1頭ごとの遺伝子で決まります。ジャージー牛という品種全体でA2型が多い傾向はありますが、個々の牛を検査しない限りA2ミルクとは呼べません。
品種の傾向と個体の遺伝子は別物です
売り場でジャージー牛乳のパッケージを手に取ったとき、これがA2ミルクかどうか気になるかもしれません。旧世界の牛であるジャージー牛やガーンジー牛は、A2型のβカゼインを産生する傾向があります。一方で、ホルスタインなどの品種は主にA1型のβカゼインを作ります。地域で見ると、アフリカやアジアの牛はほとんどA2型のみを作りますが、日本を含む多くの地域の牛はA1型とA2型の両方を作ります。牛は父親と母親から1本ずつ遺伝子を受け継ぎます。そのため個体の遺伝子型はA1A1、A1A2、A2A2の3通りに分かれます。ジャージー牛という品種全体でA2型が多い傾向はあっても、群れの中にはA1A2型やA1A1型の牛が存在します。品種の名前だけでは、その牛乳がA2ミルクかどうかは決まりません。確実なのは、牛がどの遺伝子を持っているかを1頭ずつ調べることだけです。では、その検査はどのように行われているのでしょうか。
A2ミルクを作るには1頭ごとの遺伝子検査が必要です
A2ミルクとは、βカゼイン遺伝子がA2A2型の牛だけから搾った乳を指す慣用的な呼称です。この牛を見つけるために、牧場では牛の耳片や毛根、血液などを採取して遺伝子を調べます。日本A2ミルク協会の認証制度では、遺伝子の型を判別するジェノタイピング法という手法が使われています。βカゼインは209個のアミノ酸が連なってできています。このアミノ酸を指定する遺伝子の暗号をコドンと呼びます。検査では、N末端から67番目のコドンがプロリンを指定するシトシン・シトシン・チミンの配列(A2型)か、ヒスチジンを指定するシトシン・アデニン・チミンの配列(A1型)かを直接検出します。この方法は東京農業大学の庫本高志教授が開発し、検査業務は株式会社エージーティーシーなどが中心となって行っています。国内には株式会社日本食品遺伝科学の「A2ミルク純度検査」のように、特定の遺伝子を増幅させるポリメラーゼ連鎖反応を用いてA1型遺伝子の推定混入量を算出する受託分析もあります。こうしてA2A2型の牛だけを選別したのち、搾乳の段階へ進みます。
A1が混ざらないように製造工程でも検査が続きます
A2A2型の牛だけを集めて搾乳しても、そのままA2ミルクとして出荷できるわけではありません。集乳車で運ぶときや工場で製造するときに、他の牛の乳が混ざるリスクがあります。そのため、出荷される牛乳そのものにA1型が混じっていないかを調べる検査が必要です。日本A2ミルク協会の認証では、農場と工場で月1回の定期検査が義務づけられています。ここにはサンドイッチ酵素免疫測定法という手法が使われます。βカゼイン全般にくっつく抗体と、A1型だけに特異的にくっつく抗体を用意し、標的のタンパク質を挟み込んで検出する仕組みです。これも東京農業大学の庫本教授らによって共同開発された手法です。ここで重要なのは、検査をしているからといって「A1がゼロ」と言い切る表示は避けるべきだという事実です。2003年、ニュージーランドの公正取引当局は、A2ミルクにA1が全く含まれないと示唆する表現は法令に違反するおそれがあると警告しました。A1が混ざらないように管理する工程そのものが、A2ミルクの品質を支えています。そもそも、なぜA1とA2という違いが生まれたのでしょうか。
突然変異でA1が生まれたと考えられています
牛のβカゼイン遺伝子は第6染色体にあります。最初に家畜化された牛は、もともとA2型の遺伝子を持っていたと考えられています。進化の過程で、ヨーロッパ地域の牛の遺伝子に自然突然変異が起きました。プロリンを指定するシトシン・シトシン・チミンの配列の真ん中にあるシトシンが、アデニンに変わる一塩基置換が起きたのです。これにより配列がシトシン・アデニン・チミンとなり、67番目のアミノ酸がヒスチジンに変わりました。これがA1型のβカゼインを作るようになった仕組みと考えられています。人間が意図的にA1の牛を増やしたわけではありません。欧州食品安全機関の2009年の報告書は、詳細な情報は無いと断ったうえで、ここ数十年の選抜目標の変化が牛の品種構成を変え、乳組成に影響を与えてきた可能性が高いと推定しています。乳量などを目標に牛を選抜してきた結果として現在の分布になりました。βカゼインの型はA1とA2の2種類だけではなく、A3、B、Cなど12以上の変異型が知られています。次に冷蔵庫を開けるときは、品種の名前だけでなく、その奥にある牛一頭一頭の遺伝子に思いを馳せてみるのも面白いかもしれません。
よくある質問
Q. ジャージー牛乳を買えばA2ミルクですか
違います。ジャージー牛という品種全体で見ればA2型を作る傾向はありますが、群れの中にはA1A2型やA1A1型の個体も存在します。A2ミルクを名乗るには、A2A2型の牛だけを分けて搾乳し、製造工程でも混入を防ぐ管理が必要です。
Q. A2ミルクは日本の法律で定められた名称ですか
日本の食品表示基準にA2ミルクの定義規定は見つけられません。現在国内で流通している認証は、日本A2ミルク協会などの民間の任意認証に基づくものです。A2ミルクという言葉自体も慣用的な呼称として使われています。
Q. A1が少しでも入っていたらどうなりますか
A1の混入を何パーセントまで許容するかという数値の基準は、日本A2ミルク協会などの公表資料に記載がありません。実務上は、定期的な検査で混入がないかを確認する仕組みで運用されています。
Q. A2の検査はどこが行っていますか
日本A2ミルク協会の認証制度では株式会社エージーティーシーなどが検査業務を行っています。それ以外にも、株式会社日本食品遺伝科学などの民間の受託分析会社がA2ミルク純度検査を提供しています。
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この記事はミルクデザイン株式会社が作成しています。北海道紋別郡西興部村で、萩原牧場のグラスフェッド生乳から牛乳・ヨーグルト・バター・チーズ・アイスクリーム・ソフトクリームを製造しています。


