A2ミルクのソフトクリーム
- 8月18日
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更新日:8月19日
飲み物としてのA2ミルクはまだ選択肢が少ない状態ですが、その乳で作られた加工品となるとさらに数は限られます。原料の段階で希少なものは、加工を経て製品へ進むほどその希少性が濃くなります。A2ミルクのソフトクリームを選ぶとき、私たちは原料の希少性だけでなく、凍結と起泡という物理的な工程を経た後の形を味わうことになります。
ソフトクリームは成分の規格ではなくその場で作る形態の名前である
ソフトクリームという言葉は、製品の成分を示す規格ではなく、提供する形態の名前です。日本の乳等省令において、冷たい氷菓類は乳固形分と乳脂肪分の割合によって「アイスクリーム」「アイスミルク」「ラクトアイス」の3つに分類されます。乳固形分15.0%以上かつ乳脂肪分8.0%以上のものがアイスクリームに該当します。ソフトクリームとは、液状のミックスを店舗の専用フリーザーに投入し、マイナス5度からマイナス7度程度に凍らせながら絞り出す形態の総称です。A2ミルクを原料として使った場合でも、この成分規格の枠組みは変わりません。生乳の水分を飛ばして乳成分を濃縮し、必要に応じて生クリームや脱脂粉乳を加えて乳脂肪分と無脂乳固形分を調整する工程は、通常のアイスクリーム類の製造と同じ手順を踏みます。A2ミルク特有のたんぱく質の構造が、法律上の分類を変えるわけではありません。売り場や観光地でA2ミルクのソフトクリームを見かけたときは、それがアイスクリーム規格なのかアイスミルク規格なのかを確認すると、濃厚さを測る一つの目安になります。成分の濃さとA2ミルクという原料の性質は、それぞれ独立した別の指標として存在しています。次の休日に出かけた先で、看板の文字を少し深く読み解くヒントになるはずです。
たんぱく質は空気を抱き込む骨格として働く
ソフトクリーム特有の滑らかで軽い食感は、液状のミックスを急冷しながら同時に空気を含ませることで作られます。この空気の含有率を示す言葉がオーバーランです。オーバーランが低いと氷のように詰まった重い食感になり、高いとふんわりとした軽い口当たりに仕上がります。このとき、空気の泡を包み込んで安定させる骨格として働くのが、乳に含まれるたんぱく質です。生乳に生クリームや砂糖を混ぜ合わせたミックスは、高温で殺菌されたあと、脂肪の粒を細かく砕く処理を受けます。その後、低温で一定時間寝かせる工程を経ることで、たんぱく質や脂肪が安定した状態になります。店舗のフリーザーの中では、このミックスが冷却用の壁面で凍りつき、それを刃で削り取りながら空気を練り込むという激しい物理的な動きが繰り返されています。このたんぱく質の網目構造がしっかりしているほど、大量の空気を抱き込んだときに、滑らかで崩れにくいソフトクリームが絞り出されます。たんぱく質は単なる栄養素としてだけでなく、ソフトクリームの物理的な構造を支える重要な建築資材として機能しています。この骨格の性質を知ると、次にソフトクリームを口にしたときの舌触りの意味が変わってきます。
凍結と起泡の工程でA2たんぱく質がどう振る舞うかは断定できない
A1ミルクとA2ミルクの違いは、この泡の骨格となるたんぱく質の一部の型にあります。牛は父方と母方から遺伝子を受け継ぐため、遺伝子型はA1A1、A1A2、A2A2の3通りが存在します。A2ミルクとは、βカゼイン遺伝子がA2A2型の牛だけから搾った乳を指す慣用的な呼称です。このたんぱく質は209個のアミノ酸からなり、端から67番目がプロリンならA2型、ヒスチジンならA1型になります。凍結と起泡という物理的に激しい工程において、このたった1つのアミノ酸の違いが、泡の骨格の強さや氷の結晶の大きさにどれほどの意味を持つのかは、はっきりした比較研究が見つかっていません。チーズやヨーグルトの製造においては、A2型の乳を使うと硬さに影響が出るという報告と、大きな差はないという報告が混在しており、査読論文でも結論が割れています。空気を抱き込んで凍らせるソフトクリームという複雑な状態において、A2たんぱく質が起泡性にどう影響するのかは、現代の科学では断定できません。空気の含有率やフリーザーの性能のほうが、食感に与える影響ははるかに大きいと言えます。原料の違いが完成品の食感にそのまま直結するとは限らないのが、加工品の奥深いところです。
冷たさは舌の感覚を鈍らせて原料の差を覆い隠す
ソフトクリームはマイナス5度からマイナス7度という温度帯で食べる食品です。人間の味覚は、体温に近い温度で最も敏感に風味を感じ取り、極端に冷たいものに対しては感覚が鈍る構造になっています。牛乳をそのまま飲むときは口の中で温められて香りが鼻に抜けますが、凍った状態で食べるソフトクリームでは冷たさが先に立ち、原料の乳が持つ微細な風味の差は感じにくくなります。さらに、ソフトクリームのミックスには砂糖などの糖分が加えられているため、強い甘さが乳本来の風味を上書きします。A2ミルクの風味が特別であると感じる方もいますが、それはA2という成分そのものの味ではなく、その牛が食べていた草や飼料、あるいは殺菌温度の違いが表れているに過ぎません。冷たいソフトクリームにおいて、A1ミルクとA2ミルクの味の違いを明確に区別することは、構造上非常に困難です。原料の差を確かめたいのであれば、加工品ではなく常温に近い温度の牛乳を飲み比べるほうが理にかなっています。冷蔵庫から出したての牛乳と、少し室温に置いた牛乳の味の違いを思い出すと、温度が味覚に与える影響の大きさが想像できるはずです。
よくある質問
Q. A2ミルクのソフトクリームはお腹がゴロゴロしませんか? 乳糖不耐が原因でお腹が鳴る場合、A2ミルクで作られたソフトクリームでも同じように症状が出る可能性があります。A1とA2の違いはたんぱく質の一部の型であり、乳糖の量は通常の牛乳と変わりません。冷たいものを一気に食べることで胃腸が冷え、動きが活発になることもお腹が鳴る要因の一つです。
Q. A2ミルクのソフトクリームは通常のソフトクリームより溶けやすいですか? 溶けやすさを決めるのは、空気の含有率や乳脂肪分の割合、そして糖分の量です。A2ミルクのたんぱく質構造が直接溶けやすさに影響を与えるという明確なデータはありません。空気を多く含んだふんわりとしたソフトクリームのほうが、断熱効果が高く熱が伝わりにくいため、溶けにくい傾向があります。
Q. A2ミルクのソフトクリームはどこで食べられますか? A2ミルクを生産している牧場に併設されたカフェや直売所、またはその牧場の生乳を専用のラインで加工している地域の道の駅などで提供されていることがあります。液状のミックスとして広域に流通させるには、製造ラインの隔離や厳密な検査が必要になるため、現時点では生産地の近くで消費されるケースが主流です。
Q. A1ミルクが混ざっていないかはどうやって確認していますか? 日本の認証制度では、抗体を利用して特定の成分を検出する定期的な検査を用いてA1の混入を確認しています。ただし、A1が何%未満といった数値の閾値は公表資料に記載がありません。複数の牧場から集乳する工場でA1が完全にゼロであることを保証する難易度は高く、専用のラインを使って加工するほうが混入のリスクは低くなります。
関連する用語
この記事はミルクデザイン株式会社が作成しています。北海道紋別郡西興部村で、萩原牧場のグラスフェッド生乳から牛乳・ヨーグルト・バター・チーズ・アイスクリーム・ソフトクリームを製造しています。


