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β-カゼインとは

  • 8月18日
  • 読了時間: 6分

更新日:8月20日

β-カゼインとは、牛乳のたんぱく質の約3割を占めるカゼインの一種です。最近スーパーの売り場でよく見かける「A1」や「A2」といった話題の中心にいる物質です。牛乳の分類は、すべてこの一種類のたんぱく質の構造の違いから始まっています。β-カゼインの仕組みを押さえると、牛乳でお腹がゴロゴロする現象の研究が今どこまで進んでいるのかが一本の線につながります。



牛乳のたんぱく質は胃酸で固まるからこそ消化が進みます


朝の食卓で牛乳を飲んだとき、その消化は胃から始まります。牛乳のたんぱく質を構成するカゼインは、胃に入ると胃酸によって凝集して「カード」と呼ばれるヨーグルト状の塊になります。いったん胃に留まるこの現象について、Jミルクは「牛乳は胃の中で固まるので消化されにくいと誤解されることがありますが、実際は全く逆で、固まるからこそ消化が良くなります」と説明しています。胃酸によってペプシノーゲンがペプシンに変わり、2.0から3.0の最適な酸性度の環境でたんぱく質の内部の結合を切ってポリペプチドやオリゴペプチドにします。

一方、牛乳に含まれるもう一つのたんぱく質であるホエイたんぱく質は、胃酸で凝固しません。そのため、カゼインよりも先に分解されて吸収へと進みます。その後、膵臓は不活性型のトリプシノーゲンとキモトリプシノーゲンを分泌します。十二指腸のエンテロキナーゼがトリプシノーゲンをトリプシンに変え、そのトリプシンがキモトリプシノーゲンなどを活性型にします。トリプシンやキモトリプシンなどの酵素が内部の結合を切り、カルボキシペプチダーゼが末端から切ることで、最終的にアミノ酸とオリゴペプチドとして吸収されます。



A1とA2の違いはアミノ酸の配列の1箇所にあります


牛乳のβ-カゼインには、主にA1型とA2型の2種類が存在します。両者の違いは、たんぱく質を構成するアミノ酸の配列の67番目だけです。A1型はこの部分がヒスチジンになっています。ここの結合が胃のペプシンや腸のトリプシンなどで切断されやすいため、上流の7つのアミノ酸残基が切り出されてβカソモルフィン7というペプチドができるとされています。

対するA2型は、67番目がプロリンになっています。この構造はたんぱく質分解酵素の影響を受けにくく、βカソモルフィン7が生成されないとされています。これが、A2ミルクが通常の牛乳と異なるとされる根拠です。ただし、Jミルクは「これは試験管の中での確認で、実際に胃や小腸でβカソモルフィン7が生成し、それが小腸から吸収されて血中に存在したり、腸管に刺激を与えたりすることについての臨床的な検証は十分に行われていない」と注記しています。試験管の中で起きる切断が、人間の複雑な消化管の中でそのまま起きているかは確認できていません。欧州食品安全機関も、無傷のペプチドが腸粘膜や血液や脳の関門を越えることは強く制限されるか阻止されると結論づけています。



オピオイド受容体に親和性をもつペプチドは牛乳に固有のものではありません


βカソモルフィン7はオピオイド受容体に親和性をもつペプチドとして知られています。しかし、このような配列を持つのは牛乳のたんぱく質だけではありません。欧州食品安全機関の2009年報告書は、たんぱく質は食事由来のものを含め、オピオイド受容体に親和性をもつものを含む幅広い生理活性ペプチドの潜在的な供給源であると述べています。オピオイドペプチド配列は動物性や植物性のたんぱく質から特徴づけられており、同報告書は大豆由来のペプチドに関する報告も引用しています。

さらに、特定のたんぱく質が犯人だと思われていた症状が、調べると別の成分によるものだった例が、消化器の分野では実際にあります。2013年に消化器病学の専門誌に載った自己申告のグルテン過敏37人の試験では、グルテン特異的な効果が見られたのは8パーセントだけで、ホエイたんぱく質を足したときも同じように症状が悪化しました。2018年に同誌に載った59人の試験では、糖質であるフルクタンを負荷したときの症状スコアがグルテンより有意に高く、グルテンと偽薬の間に差はありませんでした。牛乳を飲んだときの不調も、原因が一つとは限りません。



牛乳で不調になる人は一枚岩ではありません


牛乳を飲んでお腹が不調になる現象について、乳糖が原因なのか、それともたんぱく質が原因なのかを探る研究が行われています。2020年に臨床栄養学の専門誌に載った女性40人の試験では、乳糖不耐と確定診断された10人において、A2ミルクが吐き気と便意切迫を軽減し、呼気水素の上昇も抑えたと報告しました。一方、自分では乳製品に弱いと感じているが検査では乳糖不耐でなかった20人では、牛乳の種類にかかわらず飲んですぐに膨満やガスといった症状が出て、呼気水素は上がりませんでした。

また、2025年に酪農科学の専門誌に載ったフィンランドの36人の試験では、乳糖耐性の人ではA2ミルクとタンパク質分解済み通常乳のあいだに症状の差はありませんでした。乳糖不耐の人では乳糖の量が増えるほど症状が増えました。結論として、乳糖を除いたタンパク質分解済みの通常乳は、乳糖耐性の人ではA2ミルクと同等に、乳糖不耐の人ではA2ミルクよりよく耐えられたと報告されています。

日本国内でも、Jミルクの委託で行われた臨床研究があります。日常的に牛乳でおなかに自覚症状が出る人に牛乳を飲ませたところ、乳糖を減らした牛乳を飲んでも明らかな症状を訴える人が一定数存在しました。Jミルクはここから、乳糖を原因としない消化器症状を発現する人が一定数存在する可能性はあると述べています。



よくある質問


Q. β-カゼインはすべての牛乳に入っていますか。

はい。牛乳のたんぱく質は約8割がカゼインで、そのうちの約3割がβ-カゼインです。通常の牛乳にはA1型とA2型のβ-カゼインが混ざって入っており、A2ミルクと呼ばれるものはA2型のβ-カゼインのみを含む牛乳を指します。


Q. A2ミルクを飲めばお腹がゴロゴロしませんか。

人によります。牛乳でお腹が不調になる原因の多くは、牛乳に含まれる糖質である乳糖をうまく消化できない乳糖不耐によるものです。A2ミルクにも通常の牛乳と同じ量の乳糖が含まれているため、乳糖が原因で不調になる場合は症状が出ます。


Q. 牛乳を温めるとβ-カゼインの構造は変わりますか。

たんぱく質は熱によって変性しますが、A1型とA2型のアミノ酸配列の違いそのものは加熱しても変わりません。市販の牛乳は製造工程で殺菌のために加熱されていますが、A1型とA2型の特徴は保たれています。


Q. 自分が乳糖不耐なのか、たんぱく質が合わないのかを知る方法はありますか。

医療機関での呼気水素テストなどで乳糖不耐の検査を受けることができます。また、乳糖をあらかじめ分解してあるおなかがゴロゴロしない牛乳を飲んでみて症状が出るかどうかを確認するのも一つの方法です。



関連する用語



スーパーの牛乳売り場に並ぶパッケージを眺めるとき、そこに書かれた成分の奥にある牛たちの違いに、少しだけ考えを巡らせてみてください。

この記事はミルクデザイン株式会社が作成しています。北海道紋別郡西興部村で、萩原牧場のグラスフェッド生乳から牛乳・ヨーグルト・バター・チーズ・アイスクリーム・ソフトクリームを製造しています。

 
 
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