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たんぱく質の消化にかかる時間

  • 8月18日
  • 読了時間: 7分

更新日:8月20日

たんぱく質の消化時間は、そのたんぱく質が胃の中でどのような姿になるかで決まります。同じ飲み物に含まれるたんぱく質でも、胃酸に触れて固まるものはゆっくりと、固まらないものは素早く消化管を通り抜けます。この速度の差が、寝る前に牛乳を飲む習慣の根拠になっています。



胃酸と酵素の連携がたんぱく質を細かく切り分ける


たんぱく質が口から入って吸収されるまでには、複数の器官が連携する緻密な工程があります。朝食のトーストと一緒に飲んだ牛乳のたんぱく質も、まずは胃で待ち受ける消化の仕組みに直面します。胃の中は強い酸性に保たれており、この胃酸が消化のスイッチを入れる役割を果たします。胃酸の働きによって、待機状態だったペプシノーゲンがペプシンという消化酵素に変わります。このペプシンは、胃の中の水素イオン濃度指数が2.0から3.0という強い酸性の環境で最も活発に働きます。ここでたんぱく質の内部にある結合を切り離し、ポリペプチドやオリゴペプチドと呼ばれる短い断片へと分解していきます。

胃を通過したたんぱく質の断片は、次の器官である十二指腸へと進みます。ここでは膵臓から分泌された消化液が待ち受けています。膵臓からは、不活性型のトリプシノーゲンやキモトリプシノーゲンといった酵素の元が出されます。これらが十二指腸にあるエンテロキナーゼの働きで、トリプシンという活性型に変わります。そのトリプシンが、キモトリプシノーゲンなどを次々と働く状態に変えていくという連鎖が起きます。

トリプシンやキモトリプシン、エラスターゼはたんぱく質の内部の結合を切るエンドペプチダーゼとして働きます。さらにカルボキシペプチダーゼが末端から切るエキソペプチダーゼとして働き、最終的にアミノ酸とオリゴペプチドにまで細かくされて腸から吸収されます。どのようなたんぱく質もこの工程をたどりますが、胃の中での振る舞いによって次に進むまでの時間が大きく変わります。



牛乳のたんぱく質は胃の中で固まるものと固まらないものに分かれる


牛乳を飲むと、たんぱく質のうちカゼインは胃酸で凝集し、カードと呼ばれるヨーグルト状の塊になります。液体のまま胃を素早く通り抜けるのではなく、塊になることでいったん胃に留まる仕組みです。日本の酪農乳業の業界団体であるジェイミルクはこれについて、この現象が牛乳は胃の中で固まるので消化されにくいと誤解されることがあると紹介しています。しかし実際は全く逆で、固まるからこそ消化が良くなると説明しています。

一方、牛乳に含まれるもう一つのたんぱく質であるホエイたんぱく質は、胃酸で凝固しません。液体のまま胃を通過するため、カゼインよりも先に分解や吸収の工程へと進みます。


  • カゼイン:胃酸で固まり、ゆっくりと消化管を進む

  • ホエイたんぱく質:胃酸で固まらず、素早く消化管を進む


冷蔵庫から出してグラスに注がれた一杯の牛乳の中で、素早く吸収されるたんぱく質とゆっくり吸収されるたんぱく質が同居しています。運動の直後には素早く吸収されるホエイが、就寝前にはゆっくりと消化されるカゼインがそれぞれ役立つという行動の基準は、この胃の中での物理的な変化の違いから来ています。

では、牛乳を飲んでお腹の調子が変わる人がいるのはなぜでしょうか。



牛乳でお腹が鳴る理由は乳糖だけとは限らない


牛乳でお腹がゴロゴロする原因は、乳糖をうまく分解できない乳糖不耐だとよく説明されます。しかし理由はそれだけではありません。ジェイミルクの委託で行われた国内の臨床研究では、日常的に牛乳や乳製品でおなかに自覚症状が出る人に単盲検で牛乳を飲ませたところ、乳糖を減らした牛乳を飲んでも明らかな症状を訴える人が一定数存在しました。

2020年に米国の臨床栄養学の専門誌に載った試験でも同じ傾向が出ています。自分では乳製品に弱いと感じているものの検査では乳糖不耐でなかった人たちは、牛乳の種類にかかわらず飲んですぐに膨満やガスなどの症状が出ました。

特定のたんぱく質を足すこと自体で消化器症状が出る例は、グルテンの研究でも示されています。2013年に消化器病学の専門誌に載った試験では、グルテンを足したときもホエイたんぱく質を足したときも同じように症状が悪化しました。2018年の同誌の試験では、糖質であるフルクタンを負荷したときの症状スコアが38.6で、グルテンの33.1より有意に高く、グルテンとプラセボの間には差がありませんでした。特定のたんぱく質が犯人だと思われていた症状が、調べると別の成分によるものだった例が、消化器の分野では実際にあります。

たんぱく質の種類によって消化の過程で生じるペプチドが違うという仮説も、長年研究されています。



特定のたんぱく質が消化器に与える影響はまだ決着していない


牛乳のカゼインにはA1型とA2型があります。A1型は67番目のアミノ酸がヒスチジンで、ここのペプチド結合が胃のペプシンや腸のトリプシンなどで切断されやすいため、ベータカソモルフィン7というペプチドができるという仕組みです。A2型は67番目がプロリンで、たんぱく質分解酵素の影響を受けにくくベータカソモルフィン7が生成されないとされます。

ただし、ジェイミルクはこれが試験管の中での確認であり、実際にヒトの胃や小腸でベータカソモルフィン7が生成し吸収されるかの臨床的な検証は十分に行われていないと注記しています。試験管の中での出来事が、人の体の中で本当に起きているかは確認できていません。

2026年8月18日時点で医学文献データベースを検索すると、関連する文献は432件見つかります。そのうちランダム化比較試験18件中、少なくとも7件が特定の企業との金銭的関係を開示しています。一方、独立系の試験もあり、2025年の酪農科学の専門誌に載った試験では、乳糖を除いたタンパク質分解済みの通常乳は、乳糖耐性の人ではA2ミルクと同等に、乳糖不耐の人ではA2ミルクよりよく耐えられたと報告しています。乳糖を除いた牛乳と比べたとき、A2ミルクが優れるという結果は出ませんでした。

2019年の系統的レビューは、A2型と比べたA1型の消化器への悪影響については中程度の確実性と評価しました。研究は存在しますが、決着はしていません。



よくある質問


Q. 牛乳のたんぱく質からできるペプチドは体に悪いのですか 欧州食品安全機関の2009年報告書は、食事由来のものを含め、たんぱく質は幅広い生理活性ペプチドの潜在的な供給源であると述べています。動物性や植物性を問わず、たんぱく質を消化する過程でさまざまなペプチドが生まれます。オピオイド受容体に親和性をもつペプチドは牛乳に固有のものではありません。


Q. 乳糖不耐の人はどのような牛乳を選べばよいですか まずは乳糖を分解した乳糖フリーの牛乳や、製造過程で乳糖が減っているヨーグルトやチーズから試すのが確実な手順です。2025年のフィンランドの試験でも、乳糖不耐の人には乳糖を除いた通常牛乳のほうがよく耐えられたと報告されています。


Q. 寝る前に牛乳を飲むと太りますか 夜に摂取したカロリーが消費されなければ体重に影響します。ただし、牛乳に含まれるカゼインは胃の中で固まり、ゆっくりと消化されるため、腹持ちが良いという特徴があります。空腹で眠れない夜に、温かい牛乳を一杯だけ飲むといった取り入れ方は理にかなっています。


Q. ホエイたんぱく質とカゼインはどちらが優れていますか どちらが優れているというものではなく、消化にかかる時間の違いを活かして使い分けます。素早く吸収されるホエイは運動直後の栄養補給に、ゆっくり消化されるカゼインは長時間の空腹を満たす場面に向いています。



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この記事はミルクデザイン株式会社が作成しています。北海道紋別郡西興部村で、萩原牧場のグラスフェッド生乳から牛乳・ヨーグルト・バター・チーズ・アイスクリーム・ソフトクリームを製造しています。

 
 
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