お腹がゴロゴロするのは牛乳だけなのか
- 8月18日
- 読了時間: 9分
更新日:8月19日
プロテインでお腹がゴロゴロしない方法を探していると、牛乳でお腹を壊すという話に行き着きます。「お腹がゴロゴロする」という症状は一つに見えても、その原因は食品ごとにまったくの別物です。牛乳だけを悪者にすると、本当の原因が最後まで見つかりません。プロテインを飲んだ後の不快感は、乳糖、たんぱく質の量、他の成分の消化不良が複雑に絡み合っています。自分の体に起きていることを正確に掴むための手がかりを整理します。
プロテインの不調は乳糖のせいとは限らない
プロテインでお腹が鳴る原因として、真っ先に疑われるのが乳糖です。乳糖は牛乳に含まれる糖分で、私たちの体は小腸でこれを分解する酵素を出しています。この消化酵素の働きが弱いと、分解されなかった乳糖がそのまま大腸へと進みます。大腸に乳糖が入ってくると、腸の中の浸透圧が高くなり、濃さを薄めようとして周りから水分が引き込まれます。その結果、腸の動きが普段よりも活発になり、お腹がゴロゴロと鳴ったり、便が緩くなったりします。これが乳糖による不調の仕組みです。
粉末のプロテインは、牛乳から水分と脂肪分を取り除いて作られます。製造工程の違いによって、乳糖が多く残るものと、細かい網目を持つ特殊な膜で濾過を繰り返し、乳糖を極限まで取り除いてたんぱく質の純度を高めたものに分かれます。もしお腹がゴロゴロする原因が本当に乳糖だけであれば、乳糖が少ない製法のプロテインに変えることで不調はきれいに止まるはずです。
しかし、乳糖がほとんど入っていない高純度のプロテインに変えても、依然としてお腹が張ったりゴロゴロしたりする人がいます。この場合、乳糖は犯人ではありません。乳糖さえ取り除けば解決するという単純な図式から離れない限り、不調は続きます。何か特定の栄養素を足すこと自体が、胃腸にとって想定外の負担になっているという事実を見落としています。次に見るべきは、プロテインを飲むという行為そのものが消化器官に与える影響です。
たんぱく質を一度に流し込むこと自体が負担になる
運動の直後や忙しい朝に、水に溶かしたプロテインを一気に飲み干す場面を想像してください。冷たい液体が喉を通り、あっという間に胃に流れ込みます。この「液体で大量のたんぱく質を流し込む」という動作そのものが、消化器官にとって大きな負担となります。肉や魚、卵といった固形物からたんぱく質を摂る場合、私たちはよく噛み、唾液と混ぜ合わせながらゆっくりと飲み込みます。胃は時間をかけて固形物を溶かし、少しずつ腸へ送り出します。消化の準備が整った状態で、栄養素が次の器官へと引き継がれていきます。
液体に溶けたプロテインは、噛むという工程を省いて直接胃に届きます。胃での滞在時間が短く、消化液と十分に混ざり合わないまま、大量のたんぱく質が腸へと押し出されます。小腸の消化酵素の処理能力を超えた未消化のたんぱく質が大腸に届くと、腸内の細菌がそれをエサにして分解しようとし、その過程で大量のガスを発生させます。これが、お腹が張ったりゴロゴロと鳴ったりする仕組みです。
特定の成分が悪いのではなく、たんぱく質という栄養素を急激に足すこと自体でお腹の不調が起きる事実は、消化器の研究でも示されています。二〇一三年に米国の消化器病に関する医学誌に載った二重盲検クロスオーバー試験(自己申告のグルテン過敏三十七人)は、発酵性の糖質を減らした食事のうえでグルテンを負荷したところ、グルテン特異的な効果が見られたのは八パーセントの参加者だけでした。そして、グルテンを足したときも乳清たんぱく質を足したときも、同じように症状が悪化したと報告しています。たんぱく質の塊を急に腸に送り込めば、それが何由来であってもお腹の負担になるという構造をこの結果は示しています。
甘味料や糖質が腸の動きを変えている
プロテインの袋の裏にある成分表示を見ると、たんぱく質以外にも多くのものが含まれていることに気づきます。毎日飲み続けられるようにするための香料や、カロリーを抑えつつ強い甘みをつけるための人工甘味料、水に溶けやすくするための乳化剤などです。お腹のゴロゴロは、プロテインの主成分であるたんぱく質や乳糖ではなく、こうした味付けや加工のための成分が引き起こしている可能性があります。
特定のたんぱく質が犯人だと思われていた症状が、調べると別の成分によるものだった例が、消化器の分野では実際にあります。二〇一八年に同じく米国の医学誌に載ったノルウェーの試験(五十九人)では、フルクタンという糖質を負荷したときの症状スコアが三十八・六で、グルテンの三十三・一より統計的に明らかな差で高く、グルテンと偽薬のあいだには差がありませんでした。小麦のたんぱく質であるグルテンが原因でお腹の調子を崩していると信じられていた人たちの多くが、実は小麦に含まれる特定の糖質に反応していたという結果です。
プロテインに使われる一部の人工甘味料や糖質も、小腸で吸収されにくく、大腸で発酵しやすい性質を持っています。大腸で急速に発酵が進むと、大量のガスが発生し、お腹がパンパンに張る原因になります。また、乳糖と同じように腸内の浸透圧を上げて水分を引き込み、お腹を緩くすることもあります。牛乳や乳糖を疑う前に、毎日飲んでいるプロテインの甘い味付けが腸にどう作用しているかを確かめる必要があります。
特定のたんぱく質だけを悪者にする危うさ
お腹の不調の原因を探る中で、牛乳に含まれる特定のたんぱく質が体に悪い作用をもたらすという説を目にすることがあります。消化の過程でオピオイド(鎮痛薬などにも使われる成分)に似た配列を持つペプチドが生まれ、それが腸管に悪影響を及ぼすという主張です。この説に触れると、牛乳由来のプロテインを飲むこと自体が恐ろしく感じられるかもしれません。
しかし、オピオイド受容体に親和性をもつペプチドは牛乳に固有のものではありません。欧州食品安全機関の二〇〇九年報告書は結論の冒頭で「たんぱく質は、食事由来のものを含め、オピオイド受容体に親和性をもつものを含む幅広い生理活性ペプチドの潜在的な供給源である」と述べています。オピオイドペプチド配列は動物性・植物性のたんぱく質から特徴づけられており、同報告書は大豆由来の成分に関する報告も引用しています。つまり、たんぱく質を消化する過程でそうした配列が現れるのは、牛乳に限った話ではないということです。
さらに、オピオイド様の配列があることと、それが実際に体に作用することは別です。欧州食品安全機関は同じ結論部分で、無傷のペプチドが腸管を越える機構はほとんど分かっておらず、越えるとしても程度は非常に低いとも書いています。牛乳のたんぱく質だけを特殊な悪者のように扱うと、大豆や他の食品からたんぱく質を摂ったときに起きる同じような不調の説明がつきません。原因を一つの食品に押し付けると、自分の体に起きている現象を正確に捉え損ねます。
お腹のゴロゴロを分解して確かめる方法
プロテインを飲んでお腹がゴロゴロするとき、何が原因かを特定するには、要素を一つずつ引き算していく動作が必要です。まずは「一気に大量に飲む」という飲み方を変えます。容器一杯を数秒で飲み干すのではなく、食事のときにお茶を飲むようなペースで、少しずつ胃に落としていきます。冷たい水ではなく、常温の水やぬるま湯で溶かすことも、胃腸の温度を下げずに消化酵素の働きを保つための有効な手段です。
次に、成分の引き算をします。甘味料や香料が添加されていない、プレーン味のプロテインに変えてみます。これで不調が消えれば、原因はたんぱく質や乳糖ではなく、味付けのための成分だったと分かります。プレーン味に変えてもお腹が張る場合は、一回に飲む粉の量を半分に減らします。たんぱく質の総量が自分の消化能力を超えていたのかどうかを確かめるためです。半量にしてお腹が鳴らなくなれば、それが今のあなたの胃腸が一度に処理できる適量です。
最後に、食事全体のバランスを見直します。プロテインは魔法の粉ではなく、食事の一部です。肉や魚をしっかり食べた日に、さらにプロテインを飲めば、たんぱく質が過剰になって腸内で発酵します。自分の胃腸が一日、あるいは一食で処理できる量を知り、その範囲内で活用することが、お腹の不調を遠ざける確実な道です。今日飲むプロテインの量を半分にすることから、自分の体との対話が始まります。
よくある質問
Q. プロテインを飲むとガスが溜まりやすくなるのはなぜですか 一度に大量のたんぱく質が胃腸に送り込まれ、消化酵素の処理能力を超えてしまうからです。未消化のたんぱく質が大腸に届くと、腸内の細菌がそれをエサにして分解する過程で悪臭を伴うガスを発生させます。また、プロテインに含まれる人工甘味料や特定の糖質が腸内で急速に発酵し、大量のガスを生み出している場合もあります。
Q. プロテインを牛乳で割るか水で割るかで違いはありますか 牛乳で割ると、牛乳に含まれる乳糖や脂肪分が加わるため、消化にかかる時間と負担が大きくなります。もともと乳糖の分解が苦手な人が牛乳で割れば、当然お腹はゴロゴロしやすくなります。原因を切り分けるためには、まず水で溶かして飲み、自分の体がプロテインそのものに反応しているのか、牛乳に反応しているのかを確かめます。
Q. プロテインの種類を変えればお腹の不調は治りますか 乳糖が原因であれば、乳糖を取り除いた製法のプロテインに変えることで不調は減ります。しかし、たんぱく質を液体で一気に流し込むこと自体が負担になっている場合や、甘味料が原因の場合は、種類を変えても症状は変わりません。種類を変える前に、飲む量やペースを見直す方が先決です。
Q. 運動直後に冷たいプロテインを飲むのは胃腸に良くないですか 運動直後は筋肉に血液が集中しており、胃腸の血流は減っています。その状態で冷たい液体を大量に流し込むと、胃腸の温度が下がり、消化の働きがさらに鈍ります。運動後すぐに飲まなければならないという決まりはありません。少し時間をおいて呼吸が落ち着いてから、常温に近い温度で飲むことで胃腸への負担を減らせます。
Q. お腹が鳴らないように少しずつ飲むと効果は落ちますか 効果は落ちません。むしろ、少しずつ飲むことで胃腸がたんぱく質を適切に消化・吸収できるようになります。一度に大量に飲んで未消化のまま腸に送られ、ガスを発生させて排出されてしまうより、ゆっくりと体に吸収させる方が、栄養素としての役割をしっかりと果たします。
関連する用語
この記事はミルクデザイン株式会社が作成しています。北海道紋別郡西興部村で、萩原牧場のグラスフェッド生乳から牛乳・ヨーグルト・バター・チーズ・アイスクリーム・ソフトクリームを製造しています。


