グラスフェッドバターとは
- 6 日前
- 読了時間: 8分
更新日:1 日前
グラスフェッドバターとは、牧草を主体に育てられた牛の生乳から作られるバターのことです。牧草に含まれるβ-カロテンが乳脂肪に移るため、一般的なバターより黄色みの濃い色になるのが見た目の特徴です。この記事では、色の理由、作り方、一般的なバターとの違い、希少で高価な理由、使い方と保存方法までを順に整理します。
3行でわかる
草で育った牛のミルクから作る、黄色みの濃いバターです。
作り方は一般的なバターと同じで、違いは原料のミルクにあります。
原料のグラスフェッドミルク自体が希少なため、生産量はごくわずかです。

どうやって作られるのか
バターは、生乳からクリームを分離し、そのクリームを撹拌(チャーニング)して脂肪の粒を寄せ集めることで作られます。
撹拌を続けるとクリームは「バター粒」と「バターミルク」に分かれ、バター粒を練り上げるとバターになります。生クリームを容器に入れて振り続けると小さなバターができるのは、この原理です。

グラスフェッドバターも工程は同じです。違うのは、原料が牧草で育った牛のミルクであること。飼料の違いが、色・香り・風味の違いになって現れます。
バターは乳脂肪のかたまりです。乳等省令では、バターは乳脂肪分80.0パーセント以上・水分17.0パーセント以下と定められています。脂肪を濃縮した食品だからこそ、乳脂肪に移った草の個性が、乳製品の中でいちばんはっきり現れます。
なお、似た見た目のマーガリンは植物性油脂などから作られる別の食品で、規格上の「バター」ではありません。原材料表示が「生乳」や「クリーム(乳成分を含む)」だけのものが、ミルクから生まれた本来のバターです。グラスフェッドバターも、原材料はこのシンプルさのままです。
一般的なバターとの違い
グラスフェッドバター | 一般的なバター | |
原料乳の牛の飼料 | 牧草・粗飼料 | 穀物(濃厚飼料) |
色 | 黄色みが濃い | 淡いクリーム色 |
風味 | 草由来の風味・季節で変化 | 比較的一定 |
流通量 | ごく少ない(輸入品が中心) | 豊富 |
国内の店頭で見かけるグラスフェッドバターは、フランスやニュージーランドなど海外産が中心です。国産はさらに希少です。
黄色の正体 ── β-カロテン
グラスフェッドバターの色は、着色ではありません。
青草には、にんじんの色素として知られるβ-カロテンが多く含まれます。牛が草を食べると、β-カロテンの一部が分解されずに乳脂肪へ移り、ミルクにわずかな黄色みを与えます。バターは乳脂肪を集めた食品なので、この色が濃縮されて目に見える濃い黄色になります。
だから色は、牛が草をどれだけ食べたかの記録でもあります。青草をたっぷり食べる夏のミルクから作ったバターは色が濃く、乾草やサイレージが中心になる冬は淡くなります。同じ牧場のバターでも、季節で色が違うのは自然なことです。
穀物主体で育った牛のミルクはβ-カロテンが少ないため、バターは一年を通してほぼ一定の淡いクリーム色になります。店頭で色を見比べるだけでも、原料のミルクの背景が透けて見えます。
なぜ希少で、価格が高いのか
理由は原料にさかのぼります。
まず、バターは大量の生乳を必要とします。生乳からバターとして残るのは10分の1程度。バター100グラムを作るのに、生乳がおよそ1キログラム必要です。
その原料となるグラスフェッドミルク自体が、日本では希少です。牧草主体で牛を育てるには広い草地が必要で、取り組む牧場が限られます。日本の酪農は輸入穀物を前提とした舎飼いが約9割を占め、飼料自給率は26パーセント(令和4年度概算)にとどまります。
さらに、希少な生乳から作るグラスフェッドバターは、大規模工場の大量生産方式には乗りません。小さな工房で、昔ながらの製法で少量ずつ作られるものが多くなります。
希少な原料を、手間のかかる方法で、少量だけ。価格には、この積み重ねがそのまま反映されています。
世界で注目された理由
グラスフェッドバターという言葉が広く知られるきっかけになったのは、2010年代に米国発で流行した「バターコーヒー」です。コーヒーにバターを溶かして飲むこの習慣で、使うバターとしてグラスフェッドバターが指定されたことから、世界的に名前が知られるようになりました。
もっとも、バター自体の歴史ははるかに古く、放牧の盛んな国々では、草で育った牛のバターは昔からの日常でした。ニュージーランドやアイルランドなど放牧主体の酪農国では、牧草で育った牛のミルクからバターを作るのがむしろ標準です。店頭に並ぶ輸入グラスフェッドバターの多くが、こうした国々から来ています。
日本では事情が逆でした。輸入穀物を前提とした舎飼いが主流の日本の酪農では、牧草主体のミルク自体が希少で、そこからバターを作る作り手はさらに限られます。「国産グラスフェッドバター」が特別な存在なのは、このためです。
季節で変わる色と風味
グラスフェッドバターには、工業製品にはない特徴があります。季節です。
夏のバターは、β-カロテンをたっぷり含んだ青草の恵みで、濃い黄色になります。香りにも青草由来のさわやかさが乗ります。
冬のバターは、乾草やサイレージ中心の食事を映して、色が淡くなり、ミルクのコクが前に出ます。
同じ牧場、同じ製法でも、季節でバターの表情が変わる。均一さを求める大量生産のバターとは正反対の、農産物としての姿です。色の濃淡を「ばらつき」ではなく「季節の記録」として楽しめるのが、グラスフェッドバターの醍醐味です。
使い方 ── 風味を直接味わう
グラスフェッドバターは、バターの風味そのものを味わう使い方で違いが際立ちます。
焼きたてのトーストに塗る。じゃがバターにのせる。パンケーキの仕上げに置く。熱で香りが立ち、草由来の風味と黄色い色がいちばん活きる食べ方です。
料理では、仕上げに加える使い方が向いています。ソテーの最後にひとかけ落とす、スープに浮かべるなど、加熱しすぎずに香りを残す使い方です。
お菓子作りに使うと、焼き上がりの色と風味に個性が出ます。バターが主役のパウンドケーキやクッキーでは、違いがはっきり分かります。
シンプルな組み合わせほど、違いは雄弁です。炊きたてのご飯にのせるバターご飯、ゆでたてのとうもろこし、焼きたてのホットケーキ。特別な技術は要りません。いつもの食べ方のバターを置き換えるだけで、食卓の風景が少し変わります。
選び方 ── 表示の見るポイント
グラスフェッドバターを選ぶときは、3つの表示を見てください。
原産国。輸入品ならニュージーランド・アイルランド・フランスなど放牧の盛んな国が中心です。国産なら、どの牧場のミルクかまで書かれているものが信頼できます。
飼い方の説明。「グラスフェッド」に公的基準はないため、夏と冬に何を食べさせているかまで書く生産者の説明が手がかりになります。
発酵の有無。発酵バターなら商品名に書かれています。草の風味に発酵の香りを重ねたいかどうかで選び分けられます。
保存方法
保存は一般的なバターと同じです。
冷蔵(10度以下)で保存し、香りが移らないよう密閉してください。バターは光と酸素で風味が落ちるため、包み紙のまま密閉容器に入れるのが確実です。
すぐに使いきれない分は、小分けにして冷凍もできます。使う分だけ冷蔵庫に移して解凍すれば、風味の低下を抑えられます。
よくある質問
Q. なぜ黄色いのですか。
牧草に多く含まれるβ-カロテンが乳脂肪に移るためです。夏の青草の季節ほど色が濃くなる傾向があります。
Q. 発酵バターとは違うのですか。
別の切り口の言葉です。発酵バターは「クリームを乳酸発酵させて作るバター」のこと。グラスフェッドは「牛の飼い方」を指します。両方を満たすバターも存在します。
Q. バターコーヒーに使われるのはなぜですか。
バターコーヒーの提唱者がグラスフェッドバターを指定したことで広まりました。すっきりした風味がコーヒーになじみやすいとされます。当社では風味の相性としてもおすすめしています。
Q. 色が季節で違うのは品質の問題ですか。
いいえ。牛が食べる草の変化がそのまま色に出ているだけで、自然な姿です。
Q. 料理にはどう使えばよいですか。
トーストやじゃがバターなど、バターの風味を直接味わう使い方が向いています。加熱しすぎない仕上げ使いもおすすめです。
Q. 保存方法は普通のバターと同じですか。
同じです。冷蔵保存し、香りが移らないよう密閉して保管してください。冷凍保存もできます。
Q. なぜ価格が高いのですか。
原料のグラスフェッドミルクが希少なうえ、バター100グラムに生乳約1キログラムが必要で、大量生産に向かない作り方のためです。
関連する用語
出典
乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)── バターの成分規格(乳脂肪分80.0パーセント以上・水分17.0パーセント以下)
農林水産省 畜産局飼料課「飼料をめぐる情勢」(飼料自給率26パーセント。令和4年度概算)
この記事はミルクデザイン株式会社が作成しています。北海道紋別郡西興部村で、萩原牧場のグラスフェッド生乳から牛乳・ヨーグルト・バター・チーズ・アイスクリーム・ソフトクリームを製造しています。


