グラスフェッドミルクとは
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更新日:2 時間前
グラスフェッドミルクとは、牧草を主体に育てられた牛から搾った生乳を原料とする牛乳のことです。日本の酪農は、87パーセントを輸入に頼る濃厚飼料(穀物)を主体とする飼い方が主流のため、国産のグラスフェッドミルクは流通量の少ない希少な存在です。この記事では、味と色の特徴、栄養の傾向、手に入りにくい理由、選び方と楽しみ方までを順に整理します。
3行でわかる
グラス(草)フェッド(与えられた)=草で育った牛のミルク、という意味です。
味はすっきりとして後味が軽いのが特徴とされます。濃厚さを想像して飲むと、良い意味で裏切られます。
牛が食べる草は季節で変わるため、ミルクの風味や色もゆるやかに変わります。

一般的な牛乳との違い
グラスフェッドミルク | 一般的な牛乳 | |
牛の主な飼料 | 牧草・粗飼料 | 穀物(濃厚飼料) |
味わい | すっきり・植物の風味 | 比較的一定でコクがある |
色 | 季節で黄色みが動く | ほぼ一定 |
国内での流通量 | ごく少ない | 主流 |
味の違いは、牛の飼料の違いがそのまま乳に映るために生まれます。
高カロリーの穀物ではなく草で育つため、さわやかな風味になり、牧草に含まれるβ-カロテンが乳脂肪に移ることで、夏には黄色みを帯びます。
なお、種類別名称の上ではどちらも同じ「牛乳」です。生乳100パーセントを殺菌しただけのものだけが「牛乳」と名乗れます。グラスフェッドミルクは、その原料の生乳を「どう育てた牛から搾ったか」で区別する言葉です。
「あっさりしているのに、あとを引く」── 味の正体
グラスフェッドミルクを初めて飲んだ方の多くが、まず軽さに驚きます。
濃厚さをコクの正体と考えると不思議に思えますが、理由は飼料にあります。穀物のような高カロリーの飼料ではなく、草の繊維を反芻して消化する、牛にとって本来の食べ方で作られたミルクだからです。
すっきりとした後味の中に、青草の季節にはほのかな草の風味が現れます。冷やしてそのまま飲むと、水のように軽く、それでいてミルクの甘みが残ります。
そしてこの味は、一年を通して同じではありません。夏は放牧の青草、冬は夏に蓄えた乾草やサイレージへと牛の食事が変わるため、風味も色もゆるやかに動きます。ワインの言葉を借りて「乳のテロワール」と呼ばれる、土地と季節の個性です。
栄養の傾向
飼料の違いは、乳脂肪の中身にも影響します。
牧草主体で育てた牛の乳では、オメガ3系脂肪酸やCLA(共役リノール酸)の割合が高い傾向、そしてβ-カロテンが多い傾向が報告されています。
ただし、これらの数値は季節・草の状態・牛の個体によって変動します。「グラスフェッドだから健康に良い」と断定できる段階ではありません。確かなのは、飼料が乳の成分構成に影響するという事実と、その変動こそがこのミルクの個性だということです。
たんぱく質やカルシウムといった基本的な栄養は、一般的な牛乳と同じく含まれています。
なぜ手に入りにくいのか
理由は2つあります。
1つ目は、作れる牧場が少ないこと。牛は1日に大量の草を食べるため、牧草主体で育てるには頭数に見合う広い草地が必要です。さらに雪国では、冬の分の草を夏のうちに蓄える設計も要ります。農林水産省の資料によれば、日本の飼料自給率は26パーセント(令和4年度概算)。輸入穀物を前提に組み立てられた日本の酪農では、牧草主体の飼い方は少数派です。
2つ目は、流通の仕組みです。生乳は多くの場合、地域の指定団体がまとめて集め、複数の牧場の乳を混ぜて(合乳)乳業メーカーへ販売します。安定供給には欠かせない仕組みですが、こだわって作られたミルクも、集荷の段階でほかの生乳と混ざってしまいます。
グラスフェッドミルクが「幻のミルク」と呼ばれるのは、この2つが重なるためです。牧場が自ら加工・販売まで手がける単一牧場(シングルオリジン)の製品だけが、個性を残したまま届きます。
ミルクの一年 ── 季節のカレンダー
グラスフェッドミルクの風味は、牛の食事とともに一年を巡ります。
春、雪が解けて放牧が始まると、ミルクは少しずつ表情を変えはじめます。
夏は青草の季節です。β-カロテンを豊富に含んだ夏草をたっぷり食べるため、ミルクは黄色みを帯び、青草由来のさわやかな風味がいちばん強く出ます。ソフトクリームやバターにすると、色の違いがはっきり分かる季節です。
秋が深まると放牧は終わりに近づき、味は少しずつ落ち着いていきます。
冬は、夏のあいだに蓄えた乾草やサイレージが牛の食事になります。色は白に近づき、乳脂肪が乗ってコクが増します。同じ牧場のミルクなのに、夏とは別の顔を見せます。
この変化は品質のブレではなく、土地と季節の記録です。ワインの当たり年を語るように、ミルクの季節を語る。グラスフェッドミルクは、そういう楽しみ方のできる数少ない牛乳です。
殺菌方法との組み合わせ
グラスフェッドミルクの個性を活かすうえで、殺菌方法は重要な要素です。
日本の市販牛乳の主流は120から150度で1から3秒加熱する超高温瞬間殺菌(UHT)ですが、高温の加熱では独特の加熱香が生まれ、ミルク本来の繊細な風味が隠れやすくなります。
そのため、こだわりの生乳には63から65度・30分の低温殺菌(パスチャライズ)が選ばれることが多くなります。加熱による風味の変化が少なく、草由来のさわやかさや季節の違いが残りやすい殺菌方法です。
脂肪の粒を砕かないノンホモ製法とあわせれば、搾りたての生乳にもっとも近い姿の牛乳になります。せっかくグラスフェッドミルクを選ぶなら、殺菌方法の表示もあわせて確かめてみてください。
選び方 ── 3つの確認ポイント
グラスフェッドの表示に公的な基準はありません。頼りになるのは生産者の説明の具体性です。
飼料の説明があるか。夏と冬に何を与えているかまで書かれているかを見ます。
どの牧場のミルクか分かるか。単一牧場であれば、説明と中身が一対一でつながります。
殺菌方法もあわせて確認を。ミルク本来の風味を確かめたいなら、低温殺菌(63から65度・30分)のものが向いています。
楽しみ方
まずは冷やして、そのまま飲んでください。すっきりとした後味と甘みが、いちばん分かる飲み方です。
カフェオレやミルクティーにすると、軽やかさがコーヒーや紅茶の香りを引き立てます。
季節を変えてもう一度飲むのもおすすめです。夏と冬で風味が違うことに気づいたら、それはこのミルクの個性を受け取れた証拠です。
ミルクから広がる世界
グラスフェッドミルクの個性は、そのまま乳製品ファミリーに受け継がれます。
ヨーグルトにすれば、すっきりした酸味の中に草の風味がほのかに残ります。バターにすれば、β-カロテンの黄色がもっとも濃く現れます。ソフトクリームにすれば、軽い後味とミルクの甘みが際立ちます。
どの製品も出発点は同じ一杯の生乳です。ミルクを気に入ったら、同じ牧場のヨーグルトやバターを試してみてください。同じ個性が、違う形で顔を出すのが分かります。
よくある質問
Q. 味は濃厚ですか。
いいえ、多くの方が「あっさりしている」と感じます。牧草で育った牛のミルク本来の味は、すっきりとした軽さが特徴です。
Q. 栄養は普通の牛乳と違いますか。
飼料の違いにより、脂肪酸の構成などが変わることが報告されています。ただし個々の製品や季節でも差があるため、一律に優劣を断定することはできません。
Q. 色が黄色っぽいのは大丈夫ですか。
牧草由来のβ-カロテンの色で、草をたくさん食べた証拠です。品質の問題ではありません。
Q. 子どもでも飲めますか。
種類別名称は普通の「牛乳」と同じです。体質に合うかどうかは通常の牛乳と同様にお考えください。
Q. なぜ価格が高いのですか。
広い草地の管理と手間がかかる飼い方のため、生産できる量が限られるからです。
Q. 冬のグラスフェッドミルクは偽物ですか。
いいえ。雪国の放牧酪農では、夏に蓄えた乾草やサイレージを冬に与えるのが本来の設計です。冬は色が淡く、コクのある味わいになりますが、それも含めて一年の姿です。
Q. どこで買えますか。
一般のスーパーには並びにくいため、産直やオンラインショップ、取り組んでいる牧場・工房の直販が主な入り口になります。
Q. 保存で気をつけることはありますか。
一般的な牛乳と同じく10度以下の冷蔵で保存し、開封後は早めに飲みきってください。低温殺菌のものは賞味期限が短めなので、届いたら新鮮なうちに楽しむのがおすすめです。
Q. ヨーグルトやバターも同じミルクから作られるのですか。
作られます。同じ牧場の生乳から作るヨーグルト・バター・チーズには、ミルクと同じ個性が違う形で現れます。飲み比べならぬ「食べ比べ」も楽しみ方の一つです。
関連する用語
出典
農林水産省 畜産局飼料課「飼料をめぐる情勢」(飼料自給率:全体26パーセント、粗飼料78パーセント、濃厚飼料13パーセント。令和4年度概算)
乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)── 種類別「牛乳」の定義(生乳100パーセント使用)
この記事はミルクデザイン株式会社が作成しています。北海道紋別郡西興部村で、萩原牧場のグラスフェッド生乳から牛乳・ヨーグルト・バター・チーズ・アイスクリーム・ソフトクリームを製造しています。


