グラスフェッドバターの色は、牛がいつの草を食べたかで決まります
更新日:8月20日
グラスフェッドバターの黄色い色は、牛が食べた牧草の成分が乳脂肪に移った結果です。色が濃いほど品質が高いわけではなく、そのバターが青草の茂る夏に搾られたか、貯蔵草を食べる冬に搾られたかの記録にすぎません。同じ牧場の牛でも、季節が変わればバターの色は白から黄色へと動きます。
グラスフェッドバターの黄色は、牧草のベータカロテンが乳脂肪に移った姿です
スーパーの乳製品売り場でグラスフェッドバターを探すと、ひときわ鮮やかな黄色いブロックに目を引かれます。この濃い黄色を見ると、特別な栄養が詰まっているように感じるかもしれません。グラスフェッドバターの黄色は、牛が食べた牧草に含まれる成分が乳脂肪に移った結果です。牧草にはベータカロテンという色素が含まれています。ベータカロテンは脂溶性のため、牛の体内で消化吸収される際、水分の多い部分ではなく脂肪分に溶け込みます。牛の乳には水分と脂肪分が含まれていますが、牧草由来のベータカロテンは乳脂肪のほうに集まります。
牛乳からバターを作る工程を想像してみてください。まず生乳から脂肪分の多いクリームを分離します。次にそのクリームを激しく攪拌するチャーニングという作業を行います。攪拌を続けると、クリームの中の脂肪球を包んでいる膜が破れ、中の脂肪同士がぶつかり合ってくっつきます。同時に、バターミルクと呼ばれる水分が分離して抜けていきます。水分が抜けて脂肪分が凝縮されることで、乳脂肪に溶け込んでいたベータカロテンの色がはっきりと目に見えるようになります。これがバターが黄色くなる仕組みです。
2016年に米国の乳製品科学の学術誌へ掲載された、放牧と舎飼いの給与体系を比べた研究があります。この報告によると、放牧された牛の乳から作ったバターは、混合飼料を与えた牛の乳から作ったバターに比べ、トランスベータカロテンの濃度が有意に高かったとされています。また、共役リノール酸(シス9トランス11)の濃度も同様に高くなりました。牛が直接牧草をはむ環境が、バターの成分と色に直接関わっていることがわかります。では、グラスフェッドバターは一年中同じように黄色いのでしょうか。
同じ牧場の牛でも、季節によってバターの色は白から黄色へと動きます
グラスフェッドバターの色は常に一定ではありません。同じ牧場の牛から搾った乳で作ったバターでも、季節によって色は白から黄色へと大きく動きます。牛がその時期に食べる草の状態が変わるからです。
夏の牧場では、牛たちは太陽の光をたっぷりと浴びて育った青草を食べます。青草には水分とともにベータカロテンが豊富に含まれています。この時期に搾られた乳から作るバターは、はっきりとした黄色みを帯びます。一方、冬になると牧場は雪に覆われ、牛たちは外で青草を食べることができません。その間、牛たちは夏のうちに刈り取って発酵させたり乾燥させたりした貯蔵草を食べます。草は乾燥や発酵の過程でベータカロテンが減少するため、冬の貯蔵草を食べた牛の乳から作るバターは色が淡くなり、白に近づきます。
色が変わるのと同時に、味わいも季節の草に連動して動きます。当社のグラスフェッドミルクは、すっきりとして後味が軽く、ミルクの甘みが残るのが基調です。青草を食べる夏は、青草の香りが立ち、すっきり軽やかな味わいになります。貯蔵草を食べる冬は、寒さに備えて乳脂肪が乗ってコクが増し、濃厚になります。このとき、草の香りは穏やかになります。色、草の香り、コクの3つはそれぞれ別の軸で動きます。冬は色が淡く、香りは穏やかで、コクは増すという具合です。
季節ごとの変化 | 牛が食べる主な飼料 | バターの色合い | 香りとコクの動き |
夏(青草の時期) | 水分を多く含む生の青草 | はっきりとした黄色みを帯びる | 青草の香りが立ち、すっきり軽やかになる |
冬(貯蔵草の時期) | 夏に刈り取った乾燥草や発酵草 | 淡くなり白に近づく | 草の香りは穏やかになり、乳脂肪が乗ってコクが増す |
季節によってこれほど姿を変えるバターですが、色が薄くなると品質が落ちるのではないかと心配になる方がいます。
白いグラスフェッドバターは品質が悪いわけではありません
冬に作られたグラスフェッドバターは色が白っぽくなります。そのため、色が薄いものはグラスフェッドではないのではないか、あるいは品質が劣るのではないかと不安に思う方がいます。白いグラスフェッドバターの品質が悪いわけではありません。色はあくまで、その乳がいつ搾られたかを示す季節の記録であって、品質の等級ではないからです。
乳等省令では、バターは乳脂肪分80.0パーセント以上・水分17.0パーセント以下・大腸菌群陰性と定められています。色が黄色くても白くても、この基準を満たした本物のバターであることに変わりはありません。色が濃いほど上等で、薄いほど劣るという評価基準は存在しません。
冬の白いバターには、冬ならではの価値があります。寒さの厳しい季節、牛たちは体温を維持するために乳脂肪を蓄えます。そのため、冬の乳から作られるバターはコクが深まり、濃厚な味わいになります。青草の香りが穏やかになる分、料理やお菓子作りに使ったときに他の素材の風味を邪魔しないという使いやすさもあります。朝のトーストにたっぷりと塗って溶けたときの味わいも、夏と冬でははっきりと異なります。夏には夏の、冬には冬の良さがあります。
項目 | 色の濃さで分かること | 色の濃さでは分からないこと |
牛が食べた草 | 生の青草か、乾燥・発酵させた貯蔵草か | 牧草の品種や育った土壌の豊かさ |
搾られた季節 | 青草が茂る夏か、草が枯れる冬か | バターそのものの鮮度や保存状態 |
味わいの傾向 | 青草の香りの立ちやすさ | 乳脂肪分の割合や塩分の強さ |
色が品質の優劣ではないとわかると、次に気になるのは、なぜ私たちが普段目にするバターの多くは一年中同じ色をしているのかという点です。
牛の飼い方の違いが、バターの色に反映されます
日本の酪農は牛舎で飼う「舎飼い」が約9割を占めるとされます。舎飼いでは、牛たちは一年を通して牛舎の中で過ごし、人が運んでくる餌を食べます。このとき与えられるのが、混合飼料です。これは、デントコーンなどの穀物や牧草、大豆粕、ビタミン、ミネラルなどを牛の栄養要求に合わせて細かく計算し、混ぜ合わせたものです。
一年中安定して同じ栄養素を摂取できるため、牛の体調管理がしやすく、乳の成分も年間を通して一定に保たれやすくなります。青草を大量に食べる機会が少ないため、舎飼いの牛の乳から作るバターは、季節を問わず全体的に白っぽい淡い黄色になります。
一方、グラスフェッドバターを生み出す放牧酪農では、牛が自ら歩いて牧草をはみます。牛が口にする餌の大部分が、その季節に生えている草に依存します。そのため、夏と冬の餌の違いが極端になり、それがそのまま乳の成分とバターの色に反映されます。牛の飼い方の違いが、バターの色が変化するかどうかの分かれ道になります。
色を均一にする流通と、動くまま出す作り手にはそれぞれの役割があります
スーパーに並ぶ多くのバターが一年中同じ色と味を保っているのには、流通と製造の仕組みも大きく関わっています。大規模な乳業メーカーの工場では、毎日何十、何百という牧場からタンクローリーで集められた生乳を混ぜ合わせてバターを作ります。複数の牧場の乳を合わせることで、それぞれの牧場が持つ餌の違いや季節ごとのばらつきが均されます。
さらに、製造工程で水分量や脂肪分を厳密に調整し、常に決められた規格に収まるようにコントロールします。これにより、消費者はいつ買っても同じ色、同じ味のバターを安心して手に入れることができます。これは、私たちの食卓に安定して乳製品を届けるための非常に優れた仕組みです。
一方で、単一の牧場の乳だけで作る小規模な製造では、生乳を混ぜ合わせて均一にすることができません。牛が食べた草の色が、そのままバターの色になります。夏は黄色く、冬は白い。当社のバターも、季節によって色や風味が動くままに出荷しています。お客様からは「軽さに驚く」「あっさりしている」という反応をよくいただきます。色が動くことも、味がすっきりしていることも、均一化されていないその季節だけの牧場の姿をそのままお渡ししている結果です。色を揃える工業製品と、動くまま出す小規模製造には、それぞれ異なる役割があります。
冷蔵庫を開けるたびに、牧場の季節を感じるという楽しみ方
グラスフェッドバターを棚で選ぶとき、色の濃さだけで優劣を決める必要はありません。黄色いバターに出会ったら、青草が風にそよぐ夏の牧場を想像してみてください。白いバターに出会ったら、雪景色の中で静かに貯蔵草をはむ冬の牛たちを思い浮かべてみてください。
バターの色は、牛たちが生きた季節の記録です。朝、トーストにバターを塗るとき、その色が数ヶ月前と少し違うことに気づくかもしれません。香りの立ち方や口溶けの軽さが変わっていることにも気づくはずです。それは、自然のサイクルがそのままあなたの食卓に届いているということです。今日から冷蔵庫のバターを開けるとき、これがいつの季節に搾られた乳なのか、少しだけ想像を巡らせてみてはいかがでしょうか。
よくある質問
Q. 黄色いバターと白いバターでカロリーは違いますか?
バターの色によってカロリーが大きく変わることはありません。乳等省令により、バターは乳脂肪分80.0パーセント以上と定められており、脂肪分の割合はどの季節でも一定の基準を満たしています。そのため、黄色くても白くてもカロリーはほぼ同じです。
Q. グラスフェッドバターは普通のバターの代わりに料理に使えますか?
もちろんお使いいただけます。ただし、夏のグラスフェッドバターは青草の香りが立つため、素材の風味を活かすシンプルな料理に向いています。冬のバターは香りが穏やかでコクがあるため、焼き菓子やシチューなど、濃厚さを出したい料理によく合います。
Q. バターの表面だけが黄色くなっているのはなぜですか?
バターの表面が空気に触れて乾燥し、水分が飛んで乳脂肪分が凝縮した結果、その部分だけ色が濃く見える現象です。また、光に当たることで表面の酸化が進むこともあります。品質が劣化し始めているサインですので、保存する際は空気に触れないようラップでしっかりと包んでください。
Q. ニュージーランド産のバターが黄色いのはなぜですか?
ニュージーランドは温暖な気候を活かし、一年を通して牛を放牧し青草を食べさせる酪農が主流だからです。通年で青草を食べているため、乳脂肪にベータカロテンが豊富に移り、一年中黄色いバターが作られます。
Q. 国産のグラスフェッドバターはどこで買えますか?
国産のグラスフェッドバターは生産量が少なく、一般的なスーパーでは見かけないことがほとんどです。自然食品の専門店や、高級スーパーの乳製品コーナーを探すか、牧場や乳業メーカーのオンラインショップから直接取り寄せるのが確実な方法です。
Q. バターコーヒーに使うなら黄色と白のどちらが良いですか?
どちらを使ってもバターコーヒーは作れます。夏の黄色いバターを使うと、すっきりと軽やかな口当たりになります。冬の白いバターを使うと、コクが増して腹持ちの良い濃厚な一杯になります。お好みの味わいに合わせて使い分けてみてください。
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この記事はミルクデザイン株式会社が作成しています。北海道紋別郡西興部村で、萩原牧場のグラスフェッド生乳から牛乳・ヨーグルト・バター・チーズ・アイスクリーム・ソフトクリームを製造しています。


