top of page

乳糖不耐は治るのか

  • 8月18日
  • 読了時間: 6分

更新日:8月20日

乳糖不耐は病気のように「治す」対象ではありません。牛乳を飲んだときにお腹が鳴ったり緩くなったりする反応は、体が持っている消化の仕組みそのものです。治る・治らないという二択を手放し、自分の体が処理できる量を見つけることが現実的な付き合い方になります。牛乳が飲めないと決めている人の多くは、実は量を試していません。



自分の体が処理できる乳糖の量を探る


朝、冷蔵庫から出した冷たい牛乳をコップ一杯一気に飲み干す。この飲み方がお腹の不調を引き起こす最大の要因です。乳糖不耐は、小腸で乳糖を分解する酵素の働きが追いつかないことで起こります。処理しきれなかった乳糖が大腸に届き、水分を引き寄せたり、腸内細菌が発酵させてガスを発生させたりする仕組みです。

一気に飲めばお腹が鳴る人でも、一口だけなら何も起きないことがよくあります。まずは大さじ一杯から始めて、自分の体がどこまでなら静かに受け入れてくれるのかを確かめます。温めて飲むことも有効な手段です。温度を上げることで胃腸への刺激を和らげ、胃を通過するスピードを落とすことができます。ゆっくりと腸へ送り込むことで、酵素が働く時間を稼ぐのです。毎日少しずつ飲むことで大腸の腸内細菌が適応し、処理できる量が増えていく仕組みも人には備わっています。



牛乳のたんぱく質は胃の中で固まることで消化される


牛乳を飲むと、胃の中ではダイナミックな変化が起きています。たんぱく質の消化は胃から始まります。胃酸によってペプシノーゲンがペプシンという酵素に変わり、至適pH 2.0〜3.0の環境でたんぱく質の内部の結合を切っていきます。その後、膵臓から分泌された不活性型のトリプシノーゲンが十二指腸でトリプシンに変わり、さらに細かく分解していきます。エンドペプチダーゼとエキソペプチダーゼという酵素群が働き、最終的にアミノ酸やオリゴペプチドとして吸収される仕組みです。

牛乳のたんぱく質であるカゼインは、胃酸に触れると凝集して「カード」と呼ばれるヨーグルト状の塊になり、いったん胃に留まります。液体だった牛乳が胃の中で固まると聞くと消化に悪いように感じるかもしれません。Jミルクはこれについて「固まるからこそ消化が良くなります」と説明しています。一方、もう一つのたんぱく質であるホエイは胃酸で固まらないため、カゼインよりも先に分解されて吸収へと向かいます。では、消化の仕組みが働いているのに、なぜお腹の調子を崩す人がいるのでしょうか。



お腹の不調は乳糖だけが原因とは限らない


乳糖の量を減らしても、お腹が鳴る人がいます。Jミルクの委託で日本国内で行われた臨床研究では、日常的に牛乳でおなかに自覚症状が出る人に牛乳を飲んでもらったところ、乳糖を減らした牛乳を飲んでも明らかな症状を訴える人が一定数存在しました。乳糖を原因としない消化器症状を発現する人がいる可能性が示されています。

特定の成分が犯人だと思われていた症状が、調べてみると別の成分によるものだったという例は、消化器の分野で実際にあります。2013年に消化器病学の専門誌に載った自己申告のグルテン過敏37人を対象とした試験では、グルテン特異的な効果が見られたのは8%の参加者だけで、グルテンを足したときもホエイたんぱく質を足したときも同じように症状が悪化しました。2018年に同誌に載った59人の試験では、フルクタンという糖質を負荷したときの症状スコアが38.6となり、グルテンの33.1より有意に高く(P=.049)、グルテンとプラセボの間には差がありませんでした。牛乳でお腹が痛くなる理由を探るには、いくつかの要素を切り分ける必要があります。


  • 一度に飲む量と温度

  • 乳糖そのものの量

  • 乳糖以外の成分



牛乳の種類を変えても症状が出る人はいる


牛乳のたんぱく質の違いが消化に影響するという見方があります。A1ミルクとA2ミルクの違いです。A1型は67番目のアミノ酸がヒスチジンで、胃や腸の酵素で切断されやすいため、βカソモルフィン7(βカソモルフィン7)というペプチドができるとされます。A2型はここがプロリンで、酵素の影響を受けにくくβカソモルフィン7が生成されないとされます。しかしJミルクは、これは試験管の中での確認であり、実際に人の体内でβカソモルフィン7が生成され腸管に刺激を与えるかについての臨床的な検証は十分に行われていないと注記しています。欧州食品安全機関(欧州食品安全機関)の2009年報告書も、βカソモルフィン7などはジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV)による加水分解に非常に感受性が高く、無傷のまま腸粘膜を越えることは強く制限されるか阻止されると結論づけています。

2025年に米国の乳製品科学の学術誌誌に載ったフィンランドの試験(36人)では、乳糖耐性の人ではA2ミルクとタンパク質分解済み通常乳のあいだに症状の差はなく、乳糖不耐の人では乳糖の量が増えるほど症状が増えました。2020年に米国臨床栄養学の専門誌に載った試験(女性40人)でも、自分では乳製品に弱いと感じているが検査では乳糖不耐でなかった20人は、牛乳の種類にかかわらず飲んですぐに症状が出ています。牛乳の種類を変えればすべて解決するとは限りません。明日の朝、コップの底に少しだけ注いだ牛乳から、自分の体との対話を始めてみませんか。



よくある質問


Q. ヨーグルトやチーズなら食べてもお腹が鳴りません。なぜですか。

A. 発酵の過程で乳酸菌が乳糖の一部を分解しているためです。また、チーズの製造工程では水分(ホエイ)を排出するため、水溶性である乳糖の多くが一緒に取り除かれます。牛乳よりも乳糖の総量が少ないため、体が処理できる範囲に収まっている状態です。


Q. 毎日飲めば乳糖不耐症は治りますか。

A. 病気として「治る」わけではありませんが、継続して飲むことで大腸の腸内細菌叢が変化し、乳糖を処理する能力が高まる仕組みが人には備わっています。一度に大量に飲むのではなく、大さじ一杯など少ない量から毎日続けることが、体が適応するための基準になります。


Q. 温めると乳糖の成分は減るのでしょうか。

A. 加熱しても乳糖の量は減りません。温めることの目的は、胃腸への急激な温度変化による刺激を防ぐことと、胃を通過して小腸へ送られるスピードを緩やかにすることです。ゆっくりと腸へ届くことで、限られた量の分解酵素が働く時間を確保できます。


Q. お腹がゴロゴロ鳴るだけで痛みはないのですが、飲むのをやめるべきですか。

A. 痛みや下痢がなく、単にお腹が鳴ったりガスが出たりする程度であれば、それは腸内細菌が乳糖を分解して発酵している自然な活動のサインです。ご自身の生活に支障がなければ、そのままの量で飲み続けても問題ありません。気になる場合は飲む量を少し減らして調整します。



関連する用語



この記事はミルクデザイン株式会社が作成しています。北海道紋別郡西興部村で、萩原牧場のグラスフェッド生乳から牛乳・ヨーグルト・バター・チーズ・アイスクリーム・ソフトクリームを製造しています。

 
 
bottom of page