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低温殺菌牛乳(パスチャライズ牛乳)とは

  • 5 日前
  • 読了時間: 8分

更新日:18 時間前

低温殺菌牛乳とは、63から65度で30分間という低めの温度でじっくり加熱殺菌した牛乳のことです。フランスの科学者パスツールに由来して「パスチャライズ牛乳」とも呼ばれ、加熱による風味の変化が少ないことが特徴とされます。この記事では、殺菌方法ごとの違い、名前の由来、味が違う理由、日持ちと扱い方、選び方までを順に整理します。



3行でわかる


63から65度・30分の低温でゆっくり殺菌した牛乳です。

高温殺菌に比べ、生乳に近い風味が残るとされます。

賞味期限は短めで、価格はやや高めになる傾向があります。


殺菌方法の温度と時間の比較


一般的な牛乳(UHT)との違い



低温殺菌牛乳

一般的な牛乳(UHT)

殺菌条件

63から65度・30分

120から150度・1から3秒

風味

生乳に近いとされる

加熱香がつくことがある

日持ち

短め

長め

流通量

少ない

主流

日本の市販牛乳の主流は、120から150度で1から3秒加熱する超高温瞬間殺菌(UHT)です。保存性に優れ、大量の牛乳を効率よく処理できるため、戦後の牛乳の普及を支えてきました。

この2つの間に、72度以上で15秒以上加熱する高温短時間殺菌(HTST)もあります。ヨーロッパで広く使われる方式です。

大切なのは、どの方式も法令の基準を満たした安全な殺菌だということです。乳等省令は「63度・30分の保持式殺菌、またはこれと同等以上の効果を有する方法」と定めており、方式の違いは安全性の優劣ではなく、風味と日持ちの設計の違いです。



名前の由来 ── パスツールの発明


パスチャライズ(pasteurize)という言葉は、19世紀フランスの科学者ルイ・パスツールに由来します。

パスツールは、飲み物が腐敗する原因が微生物であることを突き止め、風味を損なわない程度の穏やかな加熱で腐敗を防ぐ方法を考案しました。当初はワインの保存のために生まれたこの技術が、のちに牛乳へ応用され、世界中の牛乳を安全にしました。

「殺菌のために加熱する。ただし、風味を壊さない温度で」。低温殺菌牛乳は、この150年前の思想を今も受け継いでいる牛乳です。

この原理は牛乳にとどまらず、ジュースやビールなど多くの飲み物の衛生管理に応用され、世界の食品衛生の基礎になりました。パスチャライズという言葉が発明者の名前のまま残っているのは、それだけ大きな発明だったという証しです。



なぜ味が違うのか


牛乳は加熱の温度が高いほど、たんぱく質などの成分が熱で変化し、独特の香りが生まれます。UHT牛乳の「こうばしい」「加熱した」と表現される香りがそれです。

低温殺菌は、この変化が起きにくい温度帯でゆっくり殺菌するため、搾りたての生乳に近い風味が残るとされます。

実際に飲み比べると、低温殺菌牛乳は口当たりが軽く、後味がすっきりしていて、ミルク本来の甘みが感じやすいという声が多く聞かれます。「牛乳の加熱臭が苦手」という方が低温殺菌牛乳なら飲める、という例も珍しくありません。

飲み比べてみるのがいちばんの近道です。いつもの牛乳と低温殺菌牛乳を同じ温度に冷やして、交互に一口ずつ。香りの立ち方と後味の残り方の違いは、初めてでもはっきり分かります。

同じ生乳でも、殺菌方法で印象は大きく変わります。ミルク本来の味を確かめたいときに、まず試したい選択肢です。



日持ちと扱い方


低温殺菌牛乳の賞味期限は、UHT牛乳より短めに設定されます。加熱が穏やかなぶん、早めに飲みきる前提の牛乳です。

扱いの基本は3つです。

10度以下の冷蔵で保存する。ドアポケットより温度の安定した庫内の奥が適しています。

開封したら、期限にかかわらず早めに飲みきる。

飲む直前まで冷やしておく。冷えているほうが、すっきりした味わいが際立ちます。

「日持ちが短い」は欠点に見えますが、裏を返せば「新鮮なうちに飲む牛乳」だということです。産地の近くで、作られてから早く手元に届くほど、この牛乳は本領を発揮します。

買い方も少し変わります。まとめ買いには向かないので、飲みきれる量をこまめに。定期便のように決まったサイクルで届く仕組みとは、相性の良い牛乳です。



生乳の質が問われる殺菌


低温殺菌には、あまり語られない前提があります。原料の生乳の質です。

穏やかな加熱で確実に安全を確保するには、もともと細菌数の少ない、衛生的に扱われた生乳であることが欠かせません。搾乳の衛生管理、速やかな冷却、輸送の温度管理。牧場から工房までのすべての工程が整って、はじめて低温殺菌という選択ができます。

つまり低温殺菌牛乳は、「殺菌を弱くした牛乳」ではなく、「生乳の質に自信があるからこそ選べる殺菌」の牛乳です。パッケージの「63℃30分」という小さな表示の裏には、原料への信頼が隠れています。



楽しみ方 ── まずは冷やしてそのまま


低温殺菌牛乳のいちばんの飲み方は、よく冷やして、そのまま飲むことです。すっきりした後味とミルク本来の甘みが、もっとも素直に伝わります。

カフェオレやミルクティーにも向いています。加熱香が少ないぶん、コーヒーや紅茶の香りを邪魔せず、軽やかに寄り添います。温める場合は、沸騰させず穏やかに。せっかくの低温殺菌なので、高温にしすぎないのがコツです。

料理では、ミルクの風味を活かすスープやミルク粥、パンナコッタのようなシンプルなデザートで違いが出ます。



どこで買えるか・選び方


低温殺菌牛乳は製造に時間がかかり大量生産に向かないため、取り扱いは限られます。スーパーの一部、専門店、産直、牧場や工房のオンラインショップが主な入り口です。

パッケージの一括表示欄に「殺菌温度と時間」が必ず書かれています。「63℃30分」とあれば低温殺菌です。店頭で確かめてみてください。

そして低温殺菌牛乳には、産地との距離が近いほど有利という性質があります。日持ちが短いぶん、作られた場所の近くで、早く手元に届くものほど新鮮なうちに楽しめるからです。旅先で地元の低温殺菌牛乳を探す、産地から直送で取り寄せる。この牛乳を選ぶことは、作り手のいる土地を知ることにもつながります。

こだわりの生乳と組み合わされることが多いのも、この殺菌方法の特徴です。ミルクの個性を活かす殺菌だからこそ、グラスフェッドや単一牧場など、原料に個性のある牛乳ほど低温殺菌が選ばれます。ノンホモ(脂肪の粒を砕かない製法)とあわせた「ノンホモ・パスチャライズ牛乳」は、生乳の姿にもっとも近い牛乳です。



よくある誤解 ── 「生」ではなく、れっきとした殺菌牛乳


低温殺菌牛乳は、名前の印象から誤解されることがあります。整理しておきます。

「生乳のまま」ではありません。63から65度で30分、法令の基準に沿ってしっかり殺菌されています。日本では殺菌していない生乳をそのまま販売することは原則できません。

「殺菌が弱いから危険」でもありません。63度・30分は乳等省令が定める殺菌の基準そのものであり、安全性はUHTと同等に確保されています。違うのは保存できる期間です。

「低温殺菌のほうが栄養がある」とも言いきれません。たんぱく質やカルシウムなど主要な栄養素は、殺菌方法で大きくは変わらないとされています。

低温殺菌の価値は、安全や栄養の優劣ではなく、風味にあります。生乳の持ち味をできるだけ変えずに届けるための、時間のかかる丁寧な殺菌。それがこの牛乳の正体です。



よくある質問


Q. 低温殺菌牛乳は「生」の牛乳ですか。

いいえ。63から65度・30分でしっかり殺菌された牛乳です。未殺菌の生乳とは別のものです。


Q. 安全性は大丈夫ですか。

法令の基準を満たした殺菌方法であり、安全性に問題はありません。保存できる期間が異なるだけです。


Q. なぜ日持ちが短いのですか。

加熱が穏やかなぶん、保存できる期間が短く設定されます。早めに飲みきる牛乳です。


Q. 栄養は高温殺菌と違いますか。

たんぱく質やカルシウムなど主要な栄養素に、殺菌方法による大きな差はないとされています。違いは主に風味です。


Q. どこで買えますか。

取り扱いは限られますが、スーパーの一部や専門店・産直で見つかります。表示欄の「63℃30分」が目印です。


Q. 値段が高いのはなぜですか。

殺菌に時間がかかり大量生産に向かないこと、流通量が少ないことによります。


Q. 温めて飲んでもよいですか。

かまいません。沸騰させず穏やかに温めると、風味の変化を抑えられます。


Q. HTST(高温短時間殺菌)とはどちらがよいのですか。

優劣ではなく設計の違いです。HTSTは72度以上・15秒以上で、風味と効率のバランスを取った方式。生乳に近い風味をより重視するなら低温殺菌(LTLT)が候補になります。


Q. グラスフェッドと関係はありますか。

別の切り口ですが、ミルクの個性を活かす殺菌として、こだわりの生乳と組み合わされることが多い方式です。



関連する用語




出典


乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)── 牛乳の殺菌基準(63度・30分の保持式またはこれと同等以上の効果を有する方法)

この記事はミルクデザイン株式会社が作成しています。北海道紋別郡西興部村で、萩原牧場のグラスフェッド生乳から牛乳・ヨーグルト・バター・チーズ・アイスクリーム・ソフトクリームを製造しています。

 
 
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